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2012年7月7日
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「世界のウチ」

冷たい手すりより温かいその手で

〈シニアの家と暮らし方〉 ペルー・原田慶子

写真:残念ながら、この位置ではせっかくの手すりもほとんど役に立たない拡大残念ながら、この位置ではせっかくの手すりもほとんど役に立たない

写真:これだけなだらかで幅のあるスロープなら、お年寄りだけでなく車椅子の人も安心だ拡大これだけなだらかで幅のあるスロープなら、お年寄りだけでなく車椅子の人も安心だ

写真:買い物や散歩も付き添ってくれる介護スタッフ。おばあちゃんの歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる拡大買い物や散歩も付き添ってくれる介護スタッフ。おばあちゃんの歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれる

 ペルーでは、バリアフリーが考慮された住宅は少ない。戸建てにしろアパートにしろ玄関先に段差のある建物が多く、足腰の弱いお年寄りは外出のたびに苦労している。また、手すりがあっても使い勝手を考慮せずに取り付けられているものもあり、本来の役目を果たせずにいることも。私の暮らすアパートも玄関先に手すりがあるが、手を伸ばさないとつかめない位置にあるため、今ではクリスマス飾りをぶら下げるだけの棒になってしまった。

 加えて、エレベーターのないアパートもいまだに多い。エレベーターの保守には結構な費用がかかるため、戸数の少ない物件だと各家庭の管理費が一気に上がってしまうからだ。とはいえ、毎日階段を上り下りするのはお年寄りでなくても大変だろう。利便性を取るか管理費の安さを選ぶか、大いに悩むところである。

 エレベーターのない我がアパートの1階には、齢八十を過ぎたヒルダおばあちゃんが一人で暮らしている。1階とはいえアパートの玄関には階段がある上、前述のとおり手すりは役に立たないため、一人では上り下りができない。

 しかし、ベテランの家政婦さんが慣れた手つきで介助するので、おばあちゃんは家に閉じこもることなく週に何度も外出している。人件費の安いこの国では、一人暮らしのお年寄りが家政婦や介護スタッフを雇うことはめずらしくない。もちろん信頼できる人を探すのは大変だが、よい関係さえ結べればこれほど頼りになる存在はない。

 また、カトリックの影響で家族の絆がとても強いこともお年寄りにはありがたい。週末には家族そろって昼食を取る習慣があるが、子どもが結婚して家を出たあともこの習わしは変わらない。五十をとうに過ぎている息子さんも、奥さんや子どもたちを連れてヒルダおばあちゃんのもとへ毎週のようにやってくる。家族に囲まれたそのひとときは、おばあちゃんの元気のもとになっているようだ。

 最近はリマにもエレベーター付きのアパートが増えてきた。また玄関口に車いす専用のリフトが取り付けられたり、階段の代わりにスロープが設置されるなど、リマの住宅事情も少しずつ変わってきている。

 この街にはお年寄りの暮らしを支える人と人とのあたたかいつながりがある。いつも手を握って歩行を助けてくれる家政婦や介護スタッフ、どんなに忙しくても週に一度は顔を見せにやってくる家族。こうした人たちに囲まれて過ごすリマのお年寄りは、とても幸せだと思う。

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