スペインの娯楽というとサッカーや闘牛、フラメンコが観光向けには知られているが、実際に生活をしている限り、最大の娯楽は「家族と集うこと」に尽きる気がする。
筆者がバレンシアに住みだしてすぐ、週末や祝日になるとスペイン人の友達が「いなくなる」ことに気が付いた。仲良くなった友達たちでも、そういえば休日に何かを一緒にしたことがない。両親や兄弟など家族が近所に住んでいる人だと、余計にその傾向は強くなる。
スペイン人は、休日を家族と過ごすことが徹底している。なるほど、休みの日になると筆者には遊ぶ友達がいなくなるわけだ。
しばらく住んでいると、それら家族の集いに招かれることも出てきた。バレンシアで人が集う際には、必ずといっていいほどパエリアを食べるようで、招待先で鶏肉やイカスミを使った様々な種類の手作りパエリアをごちそうになった。
パエリアとは、平底の浅くて丸い鍋に、鶏肉やウサギ肉、インゲンマメ、かたつむり、シーフードなどの具材とお米を入れ、グツグツと弱火で数時間炊くバレンシア発祥のお米料理。郊外の家では、庭にパエリアを炊く用の窯を持つ家も多く、家族が集まるとなると、まず薪をおこし、そこに大きなパエリア鍋をのせてグツグツと何時間もパエリアを炊く。
家族のなかで誰がパエジェーロ(パエリアを調理する人)になるかは特別決められているわけではないそうだが、私が今までお邪魔した家族では、すべての場合でパエジェーロはお父さんだった。薪をおこすなどの肉体労働が入ることも理由に挙げられるだろうし、ファミリー優先のスパニッシュパパには、家族サービスの一つとしてパエジェーロになることが習慣化しているのかもしれない。
食事は午後3時ごろに始まり、おしゃべりをしながら夜まで続く。特別何をするわけでもなく、家族が集まり、食べ、おしゃべりをするだけ。でも、それが彼らには最高の娯楽のようだ。そう見ていくと、スペインでの家の役割は「家族が集まるための場所」なのだと実感する。料理の用意が大変だからとか、たまには趣向を変えて外食、などといったことはまずなく、誰かの家に集まり、料理を一緒にいただき、おしゃべりをして時間を共有することが最大の娯楽なのだ。
まあ、レストランなどで集まりたくても、カトリックの国スペインでは日曜日にはすべてのお店が閉まっていて、「屋外パエリア」しか選択肢がない裏事情もあったりするのだが…。