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みんなで暮らしたい コーポラティブハウス

 理想の生活環境を手に入れるのは難しい。でも、同じ目的を持つ人が集まれば可能だ。そんな試みに成功した人たちを紹介する。(AERA編集部・浜田奈美)

     ◇

 「この青虫、でっかいなー」

 「ゴボウって、なっかなか、抜けないのねえ」

 10月某日、秋晴れ。横浜市泉区の田園地帯にあるコーポラティブハウス「さくらガーデン」で、住民たちがこんな会話を交わしながら農作業にいそしんでいた。トマトやナスなど収穫が追いつかなかった夏野菜をもぐ人、土を耕す人、雑草をむしる人。特に誰かが指示するわけでもなく、ごく自然に手分けして作業を進めている。

 「ガーデン」で最年長の久野毅さん(62)が、日焼けした顔をほころばせて言った。

 「本当は10月初旬に種まきを済ませないとならんのでしょうが、何と言ってもぼくらはものぐさ農園ですからねえ」

 2002年春に完成した「さくらガーデン」は、農作業に関心のある人たちが集まったコーポラティブハウスだ。コーポラティブ部分4戸と、賃貸部分4戸のそれぞれ鉄筋コンクリート2階建ての建物が、約300平方メートルの農園を囲むように立っている。それぞれの入居者たちが週末ごとに、この中庭での農作業に汗を流している。

 そもそもここは江戸時代から農業を続けてきた地主がトマトを有機栽培してきた土地。高齢で農作業が出来なくなったため、農地を生かす形で土地を有効利用したいと考えていたところ、息子を通じて「コーポラティブハウス」という選択肢を知り、新たな住人たちの手で農園がよみがえる形となったのだ。

 気づき始めた地主たち

 「環境」「デザイン」など、特定のコンセプトに共感する人たちが集まり、建設組合方式で話し合いを重ねて土地取得からデザイン・設計、維持管理までを自ら手がけるコーポラティブハウスは、住む家にオリジナリティーを求める消費者に静かな人気を呼んでいる。

 のみならず、新たな層がその魅力に気づき始めた。先祖代々、大事にしてきた土地の自然や特徴を残したいと願う地主たちである。

 東京都世田谷区にある「欅(けやき)ハウス」はその典型例といっていい。

 区中心部の道路に面した南側から見ればごく一般的な鉄筋5階建てマンションに過ぎないが、北側に回ると、まったくの異空間が広がっているのだ。

 高さ約20メートルの2本の欅がそびえ立ち、楓(かえで)や松が生い茂る芝地の中庭と、築150年の古民家が敷地内に同居している。古民家の縁側に腰掛けて欅を仰ぐと、秋晴れの空にくっきりと浮き上がる葉が美しい。葉を揺らす風が運んでくるかすかな車の音が、ここが都心であることを辛うじて物語る。

 欅ハウスには15世帯が暮らしている。3〜4階のメゾネットを自宅兼仕事場にしているインテリアデザイナー富樫克彦さん(57)方を訪ねると、3階の仕事場の大きな窓から欅が目に飛び込んできた。

 「4階から見える風景が3階とまた違っていいんです。この欅と大家さんのご自宅の緑、そしてその先の緑がつながって見えて、一群の緑地に暮らしているかのような気分になれるんです」

 メゾネットならではの妙味。だが、富樫さんのこのぜいたくな暮らしも、地主の決断によっては存在し得ないものだった。

 というのも、地主の鈴木誠夫(のぶお)さん(63)は、欅ハウスの居住者たちに土地を提供することを決めた時、巨額の相続税をどう工面するかという問題に直面していた。大手不動産業者に土地を売り払うことも、容易に出来たはずなのだ。

 「1本の木を残すことと、ガバッと金の入るマンション建設と、どっちを選ぶか考えたら普通はマンションだろ? だが、どうやったって相続税なんて免れない。つまらないことはしたくなかったんだ。正直、欅に強い思い入れがあったワケでもないが、年ってことだ。あの欅がさ、江戸時代からこの世に存在するヤツだってことを、考えてみたんだよ」

 鈴木家は江戸後期から一帯の地主として知られていた。英語教師をしていた鈴木さんは、父母の死後、広大な土地をきょうだい2人と相続。鈴木さんが払うべき相続税は約2億円だったが、とても払えない。土地を手放すしかないと考えつつも、木を切り倒して古民家をつぶし、土地を細切れに売るであろう大手不動産業者に渡す気にはなれなかった。

 自然を残す方策さぐり

 区や知人を通じて理解者を探していたところ、区内で環境共生型コーポラティブハウス「経堂の杜」を00年春に完成させたコンサルタント会社「チームネット」(甲斐徹郎代表)の存在を知った。

 経堂の杜も、欅の巨木に包まれた杜を残したいという地主の希望をかなえたものだ。太陽の熱や光、風や夜間の冷気などの自然の恵みを住居に取り込み、室内を快適にする建築手法があるが、経堂の杜は欅の巨木を数本残し、新たな植栽と壁面や屋上の緑化でこれに成功している。

 甲斐代表は、鈴木さんにこう提案した。大手ディベロッパーなら確実に収益だけを考えた配棟計画で中庭をつぶし、敷地いっぱいにマンションか戸建てを造るだろう。それより、自然や古民家と共生したいと考える住民を募ればいい――。

 鈴木さんは甲斐代表の言葉に注目した。コーポラティブハウスという言葉すら知らなかったが、不動産業に詳しい知人と提案を聞き直すなどして半年ほど検討を重ね、01年秋、とうとう決断した。年末から古民家で開いた入居希望者に対する説明会の参加者は約400人。このうち、チームネットの提案に共感し、分譲より手間も時間もかかるコーポラティブの手法と理念を理解した15世帯が集まった。

 欅ハウスの容積率は300%まで可能だが、中庭の景観とのバランスを考えて180%に抑えた。各戸とも都心マンションの平均的な広さだが、どの住民も現在の住環境に満足している。

 昨年9月の完成から約1年。中庭で談笑する住民たちの姿を見るにつけ、鈴木さんは新たな親類を得た思いだという。

 チームネットはさらに、自然を残したいと考える地主の意向を受けた、新たなコーポラティブ・プロジェクトを大田区と世田谷区で進めている。

 甲斐代表はこう語る。

 「相続というタイミングで、古い土地から失われてきたものは大きかった。しかし、慣れ親しんだ土地が無機質な宅地化で切り刻まれることはつらいものです。土地に残したいものがある時、コーポラティブなら協力者を得られる。どうかあきらめないで欲しい」

 ■「コーポラティブハウス」って…

 【意味】 建売分譲住宅を手がけるディベロッパーを介さず、入居予定者らが「建設組合」をつくり、土地を買い求める段階から業者選定、設計・建設などに直接かかわる。各予定者の希望に従って設計・建築できる上、業者が介在しない分、分譲物件の1〜3割ほど安く済む。建設組合での議論を通じて入居前に隣人と知り合えるメリットもある。

 【歴史】 産業革命の進んだ18世紀後半のイギリスが起源とされ、欧米各国で独自の発展を遂げた。日本では60年代後半、兵庫県芦屋市で周囲に保育所がなくて困っていた11世帯が土地を共同購入し、保育所つきの共同住宅を建てたのが最初の例といわれる。2003年度までの建設戸数は全国で9000戸弱。03年10月の総住宅数は5387万戸だから、まだ少数派だ。

 【事業主体】 4タイプある。(1)入居者自身、またはコンサルタントや建築デザイナーなどのコーディネーターが介在する入居者主導型(2)自治体など公的機関(3)民間企業(4)NPO法人など非営利団体。日本では入居者主導型が約6割を占め、情報や利害関係の交通整理役としてコーディネーターを介在させるケースが多い。

 【土地】 取得形態は様々だ。通常の分譲マンションなどと同様の「区分所有型」や、50〜60年間借りた後に建物を除去して地主に返す「定期借地型」のほか、コーポラティブハウスならではの「スケルトン定期借地型」もある。これは定期借地権に「建物譲渡特約」を加えたもので、一定期間経過後(多くは30年)に地主に返す際、地主が建物を買い取るという方法。耐久性を重視した基礎や柱などの骨格部分「スケルトン」と、自由な設計やリフォームが可能な内装部分「インフィル」とに分けて建築する。契約終了後はリフォームして賃貸に切り替えることができ、入居者側は建物の売却代と家賃を相殺した上で賃貸契約を結ぶことも出来る。

 【融資】 住宅金融公庫には、コーポラティブハウスを対象とする個人共同住宅融資制度がある。区分所有だけでなく定期借地、スケルトン定借にも融資可能だが、条件がある。マンション方式の場合は延べ床面積1000平方メートル以上、個別の住居面積は55〜280平方メートル以上、テラスハウス式なら10戸以上などと条件は細かい。

 民間金融機関には特別な融資策はなく、ディベロッパー物件より融資を受けにくい。融資の可否は事業の確実性やコーディネーターの信用度によるところが大きい。

 (AERA:2004年11月15日号)


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