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自由につくりたい 進化遂げたコーポラティブハウス

 こだわりの時代。コーポラティブハウスも様々な進化を遂げた。各地でユニークな事例が誕生している。(AERA編集部・浜田奈美)

     ◇

 太鼓好きが集まった「野火さとね」(大阪府吹田市)

 千里ニュータウンの一角。鉄筋コンクリート5階建ての「野火さとね」の1階ホールには、夜な夜な和太鼓の音がとどろいている。2階から5階までの住居部分10戸には、四半世紀近く活動を続けてきた和太鼓サークル「野火」のメンバーと、その家族が暮らす。ここはつまり、和太鼓を愛する人たちによる全国に例を見ないコーポラティブハウスなのだ。

 和太鼓の音は、最大で車の2メートル前で聞くクラクションと等しい110デシベルにもなる。なかなか頻繁に使える練習場がないため、野火は河原や公民館、市民ホールなどを転々としながら練習を続けてきた。専用の練習場を作ることを検討したが、周辺地は地価が高く、土地だけでも1億5000万円近い。

 そこで古株会員の斎藤正男さん(52)が、練習場の上に会員の住宅を建てることでコストを抑えようと提案した。2年かかって10世帯が集まり、2002年10月に完成した。

 住宅部分に響く音を最小限にするため、ホールの天井のコンクリートを通常より30センチ以上厚い50センチにするなど工夫を重ねた。それでもなお多少の振動漏れはあるので、ホールの使用時間は夜9時までというルールにした。

 斎藤さんは、会社から戻ると自宅より先にホールへ向かうのが日課になったという。

 「かみさんから、どうせなら布団も持っていってそっちに住みやって言われてます」

 家族4世帯でつくった「IOS」(大阪市住吉区)

 鉄筋5階建てのコーポラティブハウス「IOS」には、長女のIさん(49)、次女のOさん(47)、弟のSさん(45)と両親の計4世帯14人が暮らしている。そう、建物の名称は3人のイニシャルの頭文字である。

 仲の良い3人はかねて、石川県加賀市で和菓子屋を営む両親も大阪に呼んで4世帯で住みたい、と話し合っていた。そしてIさんが10年ほど前、友人の参加するコーポラティブハウスを見て「これならできる」とひらめいた。戸建ては高くて手が出ないが、土地代も事業費も、共同なら割安になる。2人に相談したところ即決。首尾良く国有地の払い下げの抽選にも当選し、114平方メートルの土地を周辺地の半分近い安値で手に入れた。

 とはいうものの、初めてのことでノウハウがなく、関西を中心にコーポラティブハウスの経験が豊富な建築家・伴年晶さんにコーディネーター役を依頼。建設組合の代わりに家族間協議を重ね、家族構成に応じて入居の階を決めた。4〜5階のメゾネットがIさん、3〜4階のメゾネットが弟のSさん、2階が次女のOさん、1階が両親宅だ。

 「IOS」の象徴は、5階の共用テラスにあるガラス張りの風呂。風呂を共有することで、各戸のスペースを節約しようというアイデアだ。その分、ゆったりと、ぜいたくな作りにした。この半露天ぶろが、下町の銭湯のような家族間交流の場にもなっている。

 完成当初はうれしくて、どこかの家で毎晩、飲み明かした。大人が飲んでいる時には、年上の子が自然と年下の子の面倒をみる。まさに一つの大家族になった。

 Iさんは言う。

 「いつもは自分たちの生活に追われているからベタベタしてません。『悪い、卵ある?』『あるよ』ってぐらいの程良い距離です」

 戸建てコーポを実現「野川エコヴィレッジ」(東京都狛江市)

 自然が残る多摩川の支流・野川のほとりに、今夏、戸建てコーポラティブ9戸による小さな「街」が誕生した。コーポラティブハウスの草分け的存在として知られる「都市デザインシステム」(東京、梶原文生社長)が手がけた、戸建てプロジェクトの第2弾だ。

 同社は01年、千葉県富里市で約100世帯の戸建てコーポラティブの新たな街づくりに成功した。マンションより設計の自由度が高い戸建てでコーポラティブは難しいと言われてきたが、内外装や街の植栽などにコーポラティブの要素を取り込んだ。そして、建物の仕様や素材をあらかじめ数種類に絞り込んで事業のスピード化を図る「野川手法」を生み出した。

 この手法には、

 「都市デザインのやり方はコーポラティブではない」

 という批判もあるが、梶原社長は次のように語る。

 「確かに入居者が大議論を交わすことで結束することもありますが、コミュニティーはそれ以外の方法でも構築できる。事業自体はスムーズに進め、別の仕掛けを用意することを考えました」

 第2弾の「野川」は、より都心に近い場所での戸建てコーポラティブへの挑戦だ。東京電力から土地提供を受けて入居者を募集。建設組合の会合回数を絞り込む代わりに、川エビ採りなどを通して地元の自然に親しむ「ワークショップ」を開いた。これが、梶原氏の言う「別の仕掛け」だ。

 とはいえ、野川の環境にマッチした住環境を維持するための「環境協定」を巡る議論は白熱した。協定はこのプロジェクトの軸ともいえ、自分の土地でも戸外の決められた場所以外に物置などを建てない、家を塀や柵で覆わないなど、多項目にわたっている。

 同社の担当者はこう振り返る。

 「議論とワークショップの両面から、みなさんの中に“街の景観に配慮する家”という考え方が生まれてきたように思います」

 エコロジー重視の「きなりの家」(東京都日野市)

 里山があちこちに残る多摩丘陵の高台に01年春、「エコロジカル」をテーマにした3階建てのコーポラティブハウスが完成した。

 ここでいう「エコ」の要素は3点。(1)化学物質に頼らずに天然の素材で造ること(2)構造や設備で省エネを図ること(3)人と人とをつなぐ建物であること、だ。

 企画・発案したのは、健康に配慮した家造りを手がける設計事務所「アンビエックス」(東京、相根昭典代表)。木材は防腐剤を含まない状態のままで、オイルを塗る場合でも蜜蝋(みつろう)など天然素材を使用。水道管は、環境ホルモンが出ると言われる塩化ビニル加工の鋼管ではなく、ステンレス製。建物の外側に服を着せるように断熱材を施す「外断熱工法」で、外部の温度変化を室内に伝えにくくしている。

 そして人をつなげる設計は、例えば中庭。通常なら、居住スペースとして最も重宝するはずの建築エリアのど真ん中に中庭を設けた。どの家の扉も中庭に向かって開き、どの家へ行くにもこの中庭を通るため、そこに誰かがいればあいさつを交わし、談笑が始まる――。そんな仕掛けだ。

 環境問題にうるさ型の住人ばかりかと思いきや、相根代表の、

 「一般的なマンションを買おうとした人たちに来て欲しかった」

 という思惑通り、環境やシックハウスについて一般的な知識しか持っていない人が多く集まった。相根代表は、そうした人々がここに暮らすことでエコロジカルについて認識を高めていくことを期待した。

 建設組合では1年半、激論が交わされた。ただでさえ足りない駐車場を2台分削ってビオトープ(生態系を考慮した空間)を作る案や、消費電力の大きいエレベーターをどうするかといった議論だ。その結果、ビオトープを作る代わりに近くに不足分の駐車場を借りて順番で使うことや、歩くより遅いエレベーターを設置して使用頻度を抑えようという結論が出た。

 そうした「きなりの家」での暮らしを通じ、福井隆さん(50)は職業を変えてしまった。以前は大手流通業者の海外進出をすべてプロデュースしたこともある、消費が命のアパレル系コンサルタント。ところが、隣人の大学教授の影響もあって、入居の翌年ごろからコンサルタントの経験を生かした環境系の仕事にシフトし始めた。そして最近、以前の仕事の残務整理が終了した。

 「これからやりたいことが山ほどある。僕がそうだったように、金とか経済効率とかいうものへの虚無感を、多くの人が感じ始めている。血の通った暮らしをどう再構築するか、真剣に考えたい」

 さらにいま、「きなり」で実現した構想の第二弾が東京都町田市の広大な田園地帯で進んでいる。一度は宅地化されかけた約2500平方メートルという広大な土地に2棟の古民家を残し、より「エコ」を追求した設計にする。相根さんは言う。

 「企画側の私たちも驚くほどスケールが大きく、理想的なコーポラティブハウスになるでしょう。楽しみです」

 憧れの地に住む「鎌倉方式」(神奈川県鎌倉市)

 かつて車を持つ人たちのあこがれをたとえて「いつかはクラウン」と言ったものだ。同様に、関東に家を持とうとする人たちが「いつかは鎌倉」と夢見ることも、少なからずあるだろう。

 そんな夢をコーポラティブ方式で実現しようとしている人たちがいる。湘南エリアでの移住を支援するNPO「住みたい鎌倉・建て主塾」(島津健代表)が、JR鎌倉駅から徒歩約20分の場所にある1070平方メートルほどの土地をもつ地主と、自然をふんだんに生かした戸建てコーポラティブヴィレッジを計画している。

 予定地は三方を川に囲まれ、川沿いに高さ20メートル級の巨木が林立している。一度は分譲マンションの建設計画が進んだが、入居者が集まらず、頓挫。建蔽(けんぺい)率を抑えた戸建てコーポラティブを6戸建て、約340平方メートルの庭を共有する案を「塾」が示したところ、地主は喜んで承諾した。

 分譲か借地かは未定だが、費用は分譲の場合でも土地代込みで5000万円程度の見通し。建物も、鎌倉の風土を熟知した地元の建築家に依頼する。島津代表は、

 「普通の会社員にもこの土地で手に入る、鎌倉らしいコーポラティブハウスにしたい」

 と、再来年春の完成を心待ちにしている。

 (AERA:2004年11月15日号)


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