都市部を中心に急増しているのが高層マンション。眺望の良さや共用施設の充実ぶりが魅力だが――。
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「『火事です』というアナウンスが聞こえたので、すぐに廊下に飛び出した。そうしたら、上の階のドアから白い煙が噴き出し、警備員がドンドンとドアをたたいている。財布と携帯電話だけ持って、子供を連れて慌てて逃げました」
こう恐怖の一夜を語るのは、マンションに住む30代の主婦。
10日午後9時半ごろ、東京都江東区辰巳にある高さ105メートルの高層マンション「ベルタワー」の最上階32階の会社員男性(50)の部屋から出火した。
冒頭の主婦はこう続ける。
「3基あるエレベーターのうち2基が止まっていました。私たちは残りの1基で下まで降りましたが、階段を使って避難した人もいたようです」
出火した部屋と同じ最上階に住む男性はバルコニーの天井がすすけた。
「私はパジャマのまんまエレベーターを使って逃げました。各階からたった1基のエレベーターを使って降りてくるので、下ではたくさんの消防隊員の方が現場に昇れず、エレベーターが空くのを待っていた」
炎は100平方メートルの部屋のうち約50平方メートルを焼いたところで、消し止められた。出火の原因は調査中のため不明だが、住民約150人が一時的に避難しただけで済み、ケガ人も出なかった。
このマンションは眺望も良く、高層階からはディズニーランドや葛西臨海公園などが見えるそうだ。
かつて、米国の映画に超高層ビルが火災に襲われ、炎と煙の地獄になるパニック映画「タワーリング・インフェルノ」というのがあったが、高層ビルの火災は常にそんな危険性をはらんでいるといえるようだ。
今回は最上階からの出火だったが、これが下の階からの出火だった場合、上層階の住民の避難も困難を極めるのは容易に想像できる。
マンション問題研究会代表の先田政弘氏は、どの階であれ、ともかく、非常階段を使って逃げるのが基本だとこう指摘する。
「エレベーターに乗ると途中で止まって、閉じ込められる可能性があります。下の階からの出火の場合でも、もし、途中の階が火の海でそれ以上、下りていけないときはバルコニーを使って、下の階へ行くハッチを開けて下りていく。そういうことを知らないで、エレベーターに殺到するとパニックになってしまい危険です」
だが実際の問題として、高層階に住んでいる住民がお年寄りや子ども、病人だった場合、エレベーターを使わず、何十階とある非常階段を駆け下りたり、ハッチを伝って下りていけるものだろうか。
「そういう方々は死ぬしかありません。高層階に住んではいけないのです」
そして、火災には常に「二次災害」の問題もある。
階下の住民からは、
「水が部屋の中に入ったし、煙もたくさん入ってきたので、臭くていられない」
という声も聞かれたそうだが、前出の先田氏は言う。
「消火のために水をどんどん使いますが、コンクリートは防水性能が低いので、床を通じてポタポタと水が下の階に漏れていくんです。32階で消火すると、場合によっては30階や29階くらいまで、水が漏れていくことがあります。その責任は、出火元にはありませんから、濡れ損なんです」
(週刊朝日編集部・上田耕司)