現在位置:asahi.com>住まい>週刊朝日・AERAから> 記事 PR 注目マンション情報都心の新築マンションはもう買うな! これだけの理由2007年05月16日 都心のマンション販売が好調だ。高級物件は売れまくり、現場は「売り惜しみ」までしているという。金利高や地価上昇などを懸念して、「最後のチャンス」とばかりに連休中にモデルルームを巡った方も多いことだろう。でも、いまはホントに「買い」なのか? その実態を探った。
東京都渋谷区広尾。六本木や恵比寿、表参道など話題のスポットにもほど近い、言わずと知れた都心の一等地だ。ここに敷地面積約2万平方メートル、総戸数354戸を計画した大規模マンションが売り出されている。駅から徒歩9分。近くの病院との医療連携も採り入れた超高級物件で、「山手線内でこれ以上の規模の物件はもう出ない」とまでささやかれている。 モデルルームを訪れると、ホテル並みの華やかさで演出していた。大理石で仕立てられたロビーに行くと、受付の女性が恭しく出迎えてくれる。立地周辺を再現した巨大ジオラマや、物件イメージを伝えるシアタールームも完備。もちろん見学は、完全予約制だ。 販売担当者によると、一般販売で売り出されたのは15戸だけで、価格帯は約8500万円(約60平方メートル)から1億8600万円(約108平方メートル)。平均的な年収のサラリーマンにはとても手が届きそうにないが、「第1期販売分の約300戸はすでに分譲済み」(販売担当者)というから販売は好調のようだ。 ちなみに、最も高額なのはレジデンス棟の最上階に1戸だけあるペントハウス(約290平方メートル)で、価格はなんと約10億円! もちろん売れていた。 「マンションブームは続いていますね。有明の物件では専有面積が約610平方メートルの住戸も出現して、首都圏で過去最大級の広さになるんじゃないでしょうか」 こう話すのは、不動産経済研究所企画調査部の福田秋生部長だ。 同研究所の調べでは、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)で06年度に発売された新築マンションは前年度比15%減の7万804戸で、8年ぶりに8万戸を割った(上のグラフ)。マンション業者が地価上昇を待って売価をつり上げる「売り惜しみ」が、急速に広がっているためと言われている。 「全体の供給戸数が減っているので、市場が落ち込んだように見えるかもしれませんが、価格は首都圏全体で上がっています。都区部での『売り惜しみ』の傾向が非常に強いのです。人気エリアの供給戸数が減れば、当然契約率は落ちます。しかし、都区部の販売が回復すれば、供給戸数も契約率も上がるでしょう」(福田氏)
○ビルが2カ月で12億から23億に 東京23区で今年3月に発売されたマンションの平均価格は、前年同月より24%も高い6044万円。通常、サラリーマンが購入できる価格帯は「高くても5千万円台まで」と言われているので、いかに価格が上昇しているかがわかるだろう。 そもそも都区部の住宅地の地価が上がっているのだ。新築マンションが乱立する港区、渋谷区、中央区の上昇率はいずれも前年度比で20%以上を示している(左上の表)。 値上がりしているのは、地価だけではない。 マンション業界誌の関係者は、こう指摘する。 「鉄やアルミ、セメントなどの建設資材も値上がりしています。原油高の影響で資材を運ぶ輸送費も高いまま。建設コストが高くつくぶん、1戸あたりの専有面積も、数年前に比べて2、3割は小さくなっている。このため、都区部で4千万〜5千万円台で販売されているマンションの多くは、専有面積が約50〜60平方メートルのコンパクトタイプに変わっている。いま都区部で値頃感のあるファミリータイプの新築物件を探すのは、非常に難しいと言わざるを得ません」 そんな背景もあってか、個人向け不動産コンサルタント「さくら事務所」の長嶋修会長は、買い手から受ける相談から“焦り”を強く感じると話す。 「実際、モデルルームに行くと来場者が多いから、焦ってしまうのでしょう。2、3年前なら契約まで1週間は考える人が多かったが、いまは見学当日に申し込んだという話も聞きます。購入希望者はあおられているようですし、売り手も客が来るから強気なんでしょう」 都内の大手金融機関に勤める40代の会社員は、中央区内に3LDKの中古マンションを約6千万円で購入した。当初は新築マンションも物色していたが、希望していた地域には新築物件が少なく、同じ予算なら2LDK程度の物件しか手に入りそうになかった。 「ジャクジー付きで窓からの眺望がよい浴室など、最新の仕様には心が揺らぎましたが、同じ値段なら広いほうがいいと中古物件に決めました。売り手側は相当に強気だったので、需要があるんだなと思って焦りましたね」(会社員) なるほど、都区部におけるマンション市場は活況を呈しているように見えるが、いまは本当に“買い時”なのだろうか。 不動産市場分析の「三友システムアプレイザル」(東京都千代田区)の井上明義社長は、バブル的な兆候が見えることから「買うのはやめたほうがいい」とはっきりと語る。 「需要についての大きな動きは確認されていません。活況に見えるのは、これまで買い控えていた層が動いていることと、前回のバブル崩壊による地価下落で都心回帰の現象が起きているからに過ぎません。人口減という右下がりの状況の中での限られた需要ですから、結局行き詰まるはずです」 表参道や六本木、銀座、品川など、都心の一等地の地価上昇はオフィスビルなどの再開発事業が引っ張っている。マンション業者は「その周辺なら値下がりはないだろう」と土地を買いあさって供給を増やしてきた。特定の地域にマンション業者が集中するから、都区部が値上がる構図になっていると井上氏は指摘する。 それを支えるのが、金融機関と不動産投資信託のマネーだという。 「不動産投資信託は不動産などの資産を持っていないから、何が何でも原料(土地、建物)を買って売らないともうけにならない。必死になって他者より高い価格で手に入れようとします。景気のいい金融機関のカネ余りと、不動産投資信託が集めたカネが、地価の値上がりを生み出しているのです。金融機関の動きは前回のバブルの反省からそれほどでもありませんが、不動産投資信託は痛手を知らないし、売買をしないと商売にならない宿命にあるのです」(井上氏) 実際、不動産バブルのような現象はすでに見られている。 都内でリフォーム業を営むある会社社長は、登記簿を見せながらこう話す。 「2月初め、千代田区の一等地にある空きビルが12億円で売り出されたんです。私も興味を持ったのですが、翌日には13億円で転売されていました。その後も転売が繰り返され、4月下旬にはあっという間に23億円もの値が付いていたのです。前回のバブルをほうふつさせるような異常事態だと思いました。いずれ誰かが高値でつかまされて泣きを見ますよ」 こうした状況から、前出の井上氏はこんな大胆予測をする。 「不動産の需給のバランスは、年内にも崩壊する可能性が高いと思います。もし崩壊すれば、最も早く影響が出るのがマンション市場です。買い手がいなくなればおしまいですから、ガクッと落ち込むでしょう」 『安心マンション50のポイント』(筑摩書房)などの著書がある1級建築士の竹島清氏は、別の観点からこう指摘する。 「現在は技術がある職人が少ないのに加えて、バブル崩壊後にゼネコンが新規採用を手控えたため、まともに設計ができる30〜40代の設計者も足りません。建築は“一子相伝”の世界。かつてのゼネコンでは各課に必ず新入社員を配属して技術を継承したものです。それができないために近年のマンション建築は既製化が激しく、確実にグレードが落ちています」
○「購入するなら建築士に相談」 本来、建築物はオーダーメードでつくられていくはずのものだが、それができる人材が少ないため、まるでプラモデルをつくるような感覚でマンションが建てられているという。 竹島氏から見ると、現在の億ションは、「5年前から比べても2〜3割はグレードが落ちている」という。建築物としての価値は確実に下がっているというのだ。 とはいえ、その中でも優良物件を選ぶための防衛策はないのだろうか。 「それでも購入を決めるのなら、その前にモデルルームの周辺や駅前の建築事務所に駆け込んで、『一緒に来てほしい』と頼んでみてください。耐震偽造問題後に設計図面を置くケースが増えましたから、その場ですぐに確認ができます。専門家は図面を見れば、どの程度の建物なのかが一瞬でわかるものです。一生を左右する買い物ですから、それくらいしたほうがいい。心配しなくても建築士は喜んで来てくれると思います」(竹島氏) そもそもマンションの購入希望者はどう考えて購入すればいいのだろうか。 前出の長嶋氏は、住宅購入の買い時には「市場性」「ライフスタイル」があるというが、「もはや市場性に合わせる時代ではない」と話す。 「住宅を金融商品的に『売る、貸す』といった実践ができる人がどれくらいいるのでしょうか。ほとんどの人は永住が前提なのですから、購入に納得して、幸せに暮らせることが大事です。不動産は“縁”。自分にとっての買い時がその縁ですから、焦る必要はまったくありません」 不動産総合情報サービス「アットホーム」経営企画室の岩田紀子さんも言う。 「バブル後の10年間で、不動産の資産価値は下がるという意識が当たり前になってきています。何が起こるかわからない時代ですから、いまの価値観で将来を予測してもあまり意味がありません。自分の生活を楽しむといった考え方を優先させたほうがいいと思います」 連休中にマンション購入をご検討された方は、もう一度頭を冷やして考え直してみてはどうだろう。
■地域別で見る住宅地価の対前年変動率 (単位:%、▲はマイナス) 2006年 2007年 東京都 0.8 8.0 23区全体 2.2 11.4 都心部※1 6.3 18.0 南西部※2 1.5 10.1 北東部※3 0.9 9.8 多摩地域 ▲0.7 4.6 神奈川県 ▲1.8 1.7 横浜市 ▲1.4 3.2 川崎市 ▲0.2 5.3 その他 ▲2.8 ▲0.8 埼玉県 ▲1.6 0.9 さいたま市 ▲0.1 2.7 その他 ▲2.0 0.5 千葉県 ▲1.2 1.8 千葉市 ▲1.1 2.2 その他 ▲1.3 1.7 茨城県 ▲4.5 ▲1.3 ※1=千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区 ※2=品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区 ※3=墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区
■東京圏の住宅地価の上昇率トップ5 順位 市区町村 上昇率(%) 1 東京都港区 27.2 2 東京都渋谷区 24.8 3 茨城県守谷市 22.9 4 東京都中央区 20.9 5 東京都文京区 18.5 (国土交通省のデータから) |