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囲碁名人戦七番勝負 第1局2日目ダイジェスト

2010年9月2日

図拡大途中図(122―148手)

図拡大途中図(103―121手)

図拡大〈途中図〉先番・高尾九段(102手まで)

写真関西出身どうしの軽妙なかけ合いを大盤解説でみせる坂井秀至新碁聖(右)と井澤秋乃四段=大阪府吹田市

写真封じ手「10の四」を打つ高尾紳路九段(左)。右は封じ手を確認する井山裕太名人=2日午前9時7分、大阪府吹田市のホテル阪急エキスポパーク、日吉健吾撮影

写真拡大封じ手の棋譜用紙と封筒。用紙に封じ手の「10の四」が丸印で書き込んである

写真佳境が近づき、別室での検討にも熱がこもる。右から石田秀芳二十四世本因坊、石井邦生九段、山田規三生九段2日夕、大阪府吹田市

●名人が先勝

 第1局は2日午後7時50分、井山裕太名人(21)が挑戦者の高尾紳路九段(33)に305手までで白番6目半勝ちした。初防衛へ向け、地元大阪で好発進した。残り時間は高尾挑戦者5分、井山名人1分。

●形勢接近

 左辺黒の生死をかけたコウ争いは、挑戦者が、右上白150のコウダテに受けずに黒151とツイで決着。名人は白152と黒二子を抜き、白優勢のまま大ヨセに突入すると思われていた。だが、名人が白158と上辺の数子を助けたことから検討室が騒がしくなった。この手よりも挑戦者が左辺黒161から171に打った利益のほうが大きく、細かい勝負になったという。まだ名人がややリードとの評判。挑戦者の追い上げが届くか。

●決めに出た名人

 名人が白148にホウリコむと、検討陣から「あっ、行った!」と歓声があがった。左辺黒の生死をかけたコウ仕掛け。名人が勝負を決めに出た。このコウ争いが決着すれば、勝負の行方がはっきりしそうだ。

●対照的な両者

 手厚い、碁盤全体を見て戦う、という棋風の共通点が指摘される両対局者。ただし、食べものの好みは対照的らしい。

 午後3時を回り、おやつが出された。ふたりともカットフルーツを頼んだが、名人はアイスコーヒー、挑戦者はホットコーヒーをつけた。前日はそれぞれアイスレモンティーとホットコーヒー。ちなみに、2日目の昼食は温かい月見昆布そばの名人に対し、挑戦者はミックスサンドイッチをとった。冷たい飲みものと和食の名人に、熱い飲みものと洋食の挑戦者。つばぜり合いは、盤の外でも演じているのか。

 ホテルの4階にある対局室からは、岡本太郎作「太陽の塔」が見える。ことし不惑の記念碑は、足元で激しい戦いに入った「年下」の両対局者を、どんな思いで眺めているのだろう。

●激しい戦いに

 昼休憩前に打たれた名人の白100を発端に、午後に入ると、局面が激しくなった。白108、110で黒の連絡の不備が露呈したが、挑戦者は黒115、119で中央白地の削減を優先。名人が白120と打って左辺黒を孤立させれば、挑戦者はさらに中央黒121へ向かう。左辺黒は白からコウにする強烈な狙いが残っているが、挑戦者は腹をくくったかのように、逆に右下の白を脅しに出た。

●大盤解説に新碁聖登場

 第1局が打たれている大阪府吹田市のホテル阪急エキスポパークの2階「月光」では、午後1時半から大盤解説会が開かれている。解説に立つのは、6日前に初タイトルを獲得したばかりの坂井秀至新碁聖だ。

 聞き手の井澤秋乃四段から紹介を受けると、「碁聖になってまだ1週間なので、誰のことを言われているのかな、という感じです」。おどけながらも、「多くの方からお祝いの言葉をたくさんもらいました」と近況を報告すると、会場のファンから温かな拍手が送られていた。

 進行中の局面について、坂井碁聖は「若干、白(井山名人)のほうがいいと思いますが、まだそれほど差はついていません。この状態がしばらく続くでしょう」と語った。

 会場は、「次の一手」のクイズが出されるなど、盛り上がりをみせている。午後6時から終局にかけても同じ場所で、坂井碁聖と井澤四段による大盤解説がある。先着順で定員300人だが、申し込みは要らない。入場料1千円。

●対局再開

 午後1時、対局が再開した。検討室には、井山名人の師匠、石井邦生九段が姿を現し、まな弟子の戦いぶりを見守っている。

●名人、緩急自在

 2日目午前の攻防には名人の試合巧者ぶりがよく表れていた。黒が83(封じ手)、85と割りツイだあとの白86、90という堂々たる進行に、検討陣からは「『これで十分』という名人の自信の表れか」との声が上がる。様々な選択肢がある局面で、最も簡明なコースを選んでいる。黒91、白92から空中戦になり、挑戦者が35分の長考で中央黒99に臨むと、今度は厳しく白100にツケた。黒99の狙いは、中央の白地の削減と左辺への踏み込み。白100はそのどちらの狙いも封じてしまおうという一手だった。緩急自在な名人に、挑戦者がどう応じるか。勝負どころを迎えた。

●「名人よし」の声も

 正午になり、挑戦者が103手目を考慮中に昼食休憩に入った。消費時間は挑戦者5時間6分、名人5時間17分。挑戦者が99手目にこの一局で最長の35分を使い、両者の時間の差はだいぶ詰まった。検討室では「白がよさそう」との声が出ている。

●封じ手は「10の四」

 井山裕太名人(21)に高尾紳路九段(33)が挑んでいる第35期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第1局の2日目が2日午前9時、大阪府吹田市のホテル阪急エキスポパークで始まった。1日目は挑戦者の厳しい打ち回しに、堂々と応じた名人。2日目に入ってどう展開していくか。

 午前8時52分に名人、少しおくれて挑戦者が対局室に入った。名人は腕組みして少し前にかがみ、挑戦者は背筋をのばして、それぞれ定刻を待つ。午前9時、立会人の石田秀芳二十四世本因坊の「時間になりました」の声で、両者が前日の棋譜をゆっくりと並べだした。名人の82手目までを見届けると、立会人が封筒を開いた。「封じ手は10の四です」。挑戦者が上辺星にハネ込んで、2日目は始まった。

 持ち時間各8時間のうち、挑戦者が3時間19分、名人が4時間11分を1日目で使った。2日夜までに終局する。

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