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囲碁名人戦七番勝負 第2局2日目ダイジェスト

2010年9月17日

図拡大途中図(127―170手)

写真拡大途中図(79―127手)

図拡大〈途中図〉先番・井山名人(80手まで)

図拡大〈途中図〉先番・井山名人(73手まで)

写真封じ手を打つ高尾紳路九段(左)。右は井山裕太名人=17日午前9時6分、松山市道後湯之町の大和屋本店、飯塚晋一撮影

写真松山市立子規記念博物館の前には、友人だった正岡子規と夏目漱石の俳句を並べて刻んだ石碑が立つ。子規の句は「ふゆ枯や鏡にうつる雲の影」

●名人、ヨセ勝負しのぎきる

 囲碁名人戦第2局は17日午後7時25分、井山名人が高尾挑戦者に263手までで黒番5目半勝ちし、開幕から2連勝とした。中盤で挑戦者のコウダテに手を抜く好判断でペースをつかみ、終盤に巧妙な手を繰りだして難解なヨセ勝負をしのぎきった。残り時間は名人4分、挑戦者1分。

●名人、一気の決着を回避

 左辺黒127にハネられてぼやき続けていた白番の高尾挑戦者は、井山名人に黒131とツガれ、「いけねえ、やっちゃったかなあ」とつぶやく。黒135から143と進むと、右辺の白の大石に眼形がない。挑戦者が「死んだだけか……」とぼやくと、検討陣は「突然の終局。挑戦者の投了か」と騒がしくなった。

 白144、146は必死の抵抗。白を包囲している中央黒の大石との攻め合いが狙いだ。検討陣は難解な変化を繰り返し調べ、「黒の攻め合い勝ち」と判断。名人が決めに出るのを待っていた。ところが、名人は右下黒147、149と打って、攻め合いを回避。結城九段ら検討陣は、形勢判断の作業に入った。

●細かいヨセ勝負か

 午後の第一着は、井山名人の黒85ワタリ。午前中、高尾挑戦者が打った左下白80のコウダテに受けず、上辺のコウを解消した一手だ。ならばと挑戦者は白86に切ったが、名人の黒87、89が読みの入った好手。これで、白から左下黒への厳しい狙いはないという。白80、86の連打は空振り。白が失敗した格好だ。

 結城聡九段は「流れははっきり黒に傾きましたが、それまでは白が打ちやすそうだったので、どちらが優勢かとなると難しい」と語る。形勢は名人に好転したのか、あるいは、まだ挑戦者の優位が続いているのか。検討陣は「細かい勝負か」とみている。

 しかし、左辺黒127のハネに、挑戦者が激しくぼやき出した。

●子規も囲碁好き?

 対局地の松山ゆかりの著名な人物といえば、司馬遼太郎著「坂の上の雲」で知られる明治の軍人、秋山好古・真之兄弟に、作家の夏目漱石、そして俳人の正岡子規。

 俳句の革新者で約2万4千句を残した子規だが、囲碁にちなんだ作品もいくつかある。直筆の資料など約6万点をもつ松山市立子規記念博物館のホームページでは、子規の俳句を季節別に調べることができる。

 ためしに「碁」と入力して検索すると、春の句が4、夏7、秋8、冬1。秋の句は、「月さすや碁を打つ人のうしろ迄(まで)」「碁の音や芙蓉(ふよう)の花に灯のうつり」などが見つかる。秋の静けさが囲碁の対局風景とよく溶けあっていて、趣深い。

 子規と囲碁とのかかわりがうかがえる資料に、晩年の随筆集「病牀(びょうしょう)六尺」がある。たとえば、1902(明治35)年9月10日の項。「碁の手將棊(しょうぎ)の手といふものに汚ないと汚なくないとの別がある。それが又た其人の性質の汚ないのと汚なくないのと必ずしも一致して居ないから不思議だ」。囲碁や将棋の棋風は対局者の性格と必ずしも同じでない、という子規一流の分析だ。

 では、子規は碁をたしなんだのか。子規記念博物館の上田一樹学芸員によれば、子規を支えたジャーナリスト陸羯南(くが・かつなん)や外交官の加藤拓川ら、ごく身近な人たちが熱心な囲碁好きだったとの記録が残っている。「子規自身が碁をやったのかは、子規の記録には見当たりません。ただ、碁に親しめる環境にあったとはいえると思います」と上田さん。

 子規がこの世を去って108年。その故郷で相まみえる若き対局者ふたりの姿を、もし子規が見ていたら、どんな句を詠むだろうか。

●対局再開

 午後1時、対局が再び始まった。昼食休憩の前から考慮中だった名人は、すぐに黒85を「15の二」に打った。以降、数手がバタバタと進んだ。

 1日目に下辺の攻防が一段落したため、2日目は上辺で小競り合いに。封じ手の白64に対し、名人が黒65とハネて折衝が始まった。

 挑戦者の白66ハネに対し、名人は黒67と切る最強の手で応じた。さらに白76に黒77とアテてコウが発生。挑戦者の白80はコウダテだが、名人はすぐには受けずに黒81、83と左辺や左下で小技を繰り出した。

 解説の結城聡九段は「両者とも一歩も引けず真っ向からぶつかっています。一手一手に時間をかけた難解な読み比べになりました」と評する。

●昼の休憩に

 正午になるのを待って、挑戦者が席を立ち、続いて名人も対局室を出た。これから1時間の休憩となる。残り時間は名人2時間34分、挑戦者2時間59分。

●両者ぼやきながら戦いに突入

 いよいよ局面は上辺で戦いに入った。ここに来て、両対局者の動きがせわしくなってきた。

 たとえば、74手目を考えていた挑戦者。ぼやきが止まらない。

 10時5分「どうしたらいいんだろうか」

 同7分「わかりません」

 同11分「どうしていいのか、わかんなくなっちゃったなあ」

 同12分「全然読めないなあ」

 同13分「さっぱりわかんないなあ」

 同15分「読めないんだよなあ」

 そして、10時17分に着手したのは、アタリをかける「9の二」。ごく常識的な手だった。

 対する名人も、ぼやき続ける。「わかんないなあ」などと言っているようにも聞こえるが、小声で聞き取れない。眼鏡を外して顔をぬぐったり、頭を斜め後ろへガクッと垂れたり。動きが1日目に比べて増えた。

 前夜祭で対局地・松山へのリップサービス合戦を繰り広げた両者だが、今度はぼやきの応酬。だからといって、必ずしも局面を悲観しているわけでもなさそうだ。はたして、どちらのぼやきが本音なのか。

●封じ手は「やや手堅い手」

 井山裕太名人(21)に高尾紳路九段(33)が挑んでいる第35期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第2局の2日目が17日午前9時、松山市の旅館「大和屋本店」で始まった。

 立会人の坂口隆三九段が声をかけると、両者は前日の棋譜をゆったりと並べはじめた。午前9時6分、高尾挑戦者の封じた64手目を坂口九段が開いた。「封じ手は10の三、ツケですね」。すぐさま挑戦者が上辺星のそばに手をのばす。検討陣があげていた候補手のひとつで、「やや手堅い手」との評価だ。

 持ち時間各8時間のうち、1日目で名人が3時間42分、挑戦者が3時間51分を使った。17日夜までに終局する。

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