現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. エンタメ
  3. 囲碁
  4. 名人戦ニュース
  5. 記事
2012年10月17日18時57分
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

囲碁名人戦第5局 1日目ダイジェスト

関連トピックス

写真:豊臣秀吉が愛用したと伝えられる石の碁盤=神戸市北区の瑞宝寺公園拡大豊臣秀吉が愛用したと伝えられる石の碁盤=神戸市北区の瑞宝寺公園

写真:羽根直樹九段の昼食=17日、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」、諫山卓弥撮影拡大羽根直樹九段の昼食=17日、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」、諫山卓弥撮影

写真:第一着を打つ挑戦者の羽根直樹九段。右は山下敬吾名人=17日午前9時、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」、諫山卓弥撮影拡大第一着を打つ挑戦者の羽根直樹九段。右は山下敬吾名人=17日午前9時、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」、諫山卓弥撮影

写真:対局場となった有馬温泉の旅館「御所坊」=神戸市北区拡大対局場となった有馬温泉の旅館「御所坊」=神戸市北区

図:途中図(1―63)拡大途中図(1―63)

写真:途中図(1―44)拡大途中図(1―44)

写真:途中図(1―20)拡大途中図(1―20)

★ひと昔前のような〈孫氏の兵法〉

対局生中継・棋譜中継はこちらから

 1日目はじっくりした展開に終始しました。部分的な折衝はありましたが、本格的な戦いはまだ起こっていません。近年は中国や韓国の影響もあって日本のタイトル戦も激しい碁になっているのですが、まるでひと昔前の七番勝負を見ているかのようです。

 挑戦者が左下黒35の三々に入って足早に地を稼げば、名人は右上白42の両ガカリから手厚い碁形になり、中央白56の大きなカカエにまわりました。

 封じ手直前に挑戦者の打った下辺黒63のトビは、まず地を稼ぎ、上辺の不安定な黒三子は相手に攻めさせて巧みにさばこうという狙い。挑戦者が得意とする作戦です。これが奏功するか、あるいは名人の破壊力が上回るか。それが明日の見どころです。

■名人、64手目を封じる

 午後6時2分、山下名人が64手目を封じて1日目を終えた。封じ手はこの日最長となる45分の長考だった。持ち時間各8時間のうち、1日目の消費時間は黒番の羽根挑戦者が4時間6分、白番の名人が3時間56分。対局は18日午前9時に再開する。

■秀吉愛用の石の碁盤

 雨の中、対局場の有馬温泉「御所坊」から坂道を歩いて上ること約20分、瑞宝寺(ずいほうじ)公園を訪ねた。古くから紅葉の名所として知られ、その美しさはどれほど見ていても飽きないと豊臣秀吉がたたえたという言い伝えから、「日暮らしの庭」とも呼ばれる。園内には秀吉が愛用したといわれる自然石の碁盤がある。盤の近くには対局者と観戦者のため、四方に腰掛け石がある。その昔、秀吉らが碁盤を囲んで心ゆくまで清遊を楽しんだといわれている。瑞宝寺は黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院だったが、明治時代初めの廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の影響で廃寺になり、神戸市が1951年、公園として整備した。

 毎年11月2、3日には園内で有馬大茶会の野だてが催される。秀吉が有馬温泉をたびたび訪ねて心身を癒やし、千利休らと茶会を開いた故事にならっている。

★「じっくり」は挑戦者ペース?〈孫氏の兵法〉

 激しい戦いのないじっくりした局面が続いています。普通こういう展開は、6目半のコミをもらえる白番の歓迎するところですが、両者の棋風を考えると、黒番の挑戦者ペースといえるかもしれません。序盤、左辺黒11と割り打った作戦が当たったともいえるでしょう。ただ、名人の右下白24のオサエは、じっくり行こうという挑戦者に付き合っているようにも思えます。どこまで、この「じっくり」が続くのでしょうか。

■昼食は彩り美しく

 正午から昼食休憩に入ったが、山下名人はこれまで通り昼食はとらない。羽根挑戦者の今日のメニューは、もりそば(薬味にワサビ、刻みネギ、かつおぶし)、いなりずし、天ぷら盛り合わせ(エビ、マイタケ、カボチャ、サツマイモ、シシトウ、ナス)、卵豆腐。デザートには梨と柿。秋の実りを感じさせ、彩りが美しい。

■昼食休憩に

 挑戦者が23手目を考慮中に正午となり、昼の休憩に入った。午前の消費時間は、黒番の挑戦者が1時間57分、白番の名人が1時間3分。午後1時に再開する。

★両者の持ち味通り〈孫氏の兵法〉

 序盤は両者の持ち味が出た展開です。左辺黒11の割り打ちはいかにも羽根挑戦者らしい考えた一手。山下名人の戦闘力は囲碁界屈指ですから、局面が忙しくならないように両側にヒラく余地を残しました。名人に力を出しにくくさせる工夫ではないでしょうか。

 一方の名人は白4、8、10と四線の石が多い。位が高いのは実利よりも戦いを意識しているからです。

 白14の打ち込みは、左上を先手で切り上げて、白20のカカリに先行する狙いだと思います。

■7回目の名人戦

 有馬温泉の御所坊で囲碁名人戦が打たれるのは5年ぶり7回目。1回目は1996年、武宮正樹名人に趙治勲棋聖・本因坊が挑戦した第21期の第4局だった。武宮さんは「ここの料理は気合が入っている」と御所坊の料理を絶賛した。趙さんはマンガ本を持って温泉に2時間近く入っていたこともあった。御所坊で勝った趙さんは勢いに乗って名人位を奪取。「大三冠」に輝いた。

 2006年の第31期は張栩名人に高尾紳路本因坊が挑戦。御所坊では張さんが勝ったが、シリーズは高尾さんが制し、名人位を奪取した。07年の第32期はリターンマッチとなり、張さんが高尾名人に挑んだ。張さんは御所坊では敗れたが、この年、名人位を奪い返した。

 名勝負が繰り広げられてきた御所坊での名人戦。その歴史に今年はどんなページが加わるだろうか。

■文人ゆかりの御所坊

 有馬温泉は「日本書紀」にもその名が出てくる日本最古の温泉の一つ。囲碁名人戦第5局の対局場となった旅館「御所坊」は鎌倉幕府が開かれる前年の1191年に創業した老舗中の老舗だ。さかのぼれば蓮如(本願寺中興の祖)や豊臣秀吉も訪れたという。

 谷崎潤一郎や吉川英治ら多くの文人にも愛された。谷崎の小説「猫と庄造と二人のおんな」で主人公たちが交わす会話にも登場する。

 「そしたら、又御所の坊の二階にしょうか」「夏より今の方がええで。紅葉見て、温泉に這入(はい)って、ゆっくり晩の御飯食べて、――」「そうしょう、そうしょう、もうそれにきめたわ」

 今もなお、有名人がふらりと訪れるような、そんな雰囲気を御所坊は残している。

★天王山の一局〈孫氏の兵法〉

 本局のネット解説は関西棋院の孫英世五段が担当する。対局場となっている有馬温泉「御所坊」の検討室から熱戦の模様を随時お伝えする。

 「おはようございます。朝日新聞のネット解説を初めて担当する孫です。今期の七番勝負は、互いに白番で入れ合ったあと、今度は互いに黒番を入れ合って、まさにがっぷり四つの戦い。2勝2敗で迎える第5局は名人位の行方を左右する天王山の一局です。このコーナーには私の名字から立派なタイトルをいただきました。名前負けしないように頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」

 「羽根挑戦者の第一着は右上星。対する山下名人は左下星でしたが、ここで挑戦者は左下にカカリました。普通は右下の空き隅に打つところですが、白の受け方によってこのあとの戦略を決めようとしています」

    ◇

 そん・ひでよ 1980年、大分県生まれ。2001年入段、10年五段。05年関西棋院新人賞。

■第5局始まる

 山下敬吾名人(34)に羽根直樹九段(36)が挑戦している朝日新聞社主催の第37期囲碁名人戦七番勝負第5局が17日、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」で始まった。

 定刻の午前9時、立会人の坂口隆三九段が対局開始を告げると、先番の挑戦者は右上星に第一着を打ち下ろした。名人は左下星と応じた。

 これまで2勝2敗のタイ。この一局に勝って名人位の防衛、または奪取に「あと一勝」と迫るのは山下名人か、羽根挑戦者か。対局は2日制で、持ち時間は各8時間。18日夜までに決着する。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介
  • ねっとde碁
  • ねっとde碁
  • 名人戦名局百選

囲碁の本

第36期囲碁名人戦全記録

剛腕・山下敬吾本因坊が井山裕太名人を4勝2敗で破り、タイトルを奪取した七番勝負を観戦記で振り返る。ほか、挑戦者決定リーグ戦全37局(プレーオフを含む)の棋譜、朝日新聞紙上に載った記事や写真なども収録。

井山裕太20歳の自戦記

史上最年少で名人となった井山裕太名人の初の打碁集。名人奪取までに打った17局を自ら振り返る。坂田栄男、趙治勲、小林光一ら歴代名人7人が見た井山評も。

勝利は10%から積み上げる

囲碁界第一人者の張栩十段が、これまでの棋士人生で培われた、自らの勝負哲学を明かす。

powered by amazon

囲碁関連グッズ

第37期囲碁名人戦 記念扇子

初防衛を目指す山下敬吾名人と挑戦者・羽根直樹九段の揮毫入り。対局開催地と日本棋院だけで販売の限定品

囲碁って楽しい!

名人戦も囲碁ガールも!新しい囲碁の魅力に触れてみませんか?