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2012年10月18日19時14分
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囲碁名人戦7番勝負 第5局2日目ダイジェスト

写真:有馬温泉の太閤橋の近くにある豊臣秀吉像=神戸市北区拡大有馬温泉の太閤橋の近くにある豊臣秀吉像=神戸市北区

写真:山下敬吾名人の封じ手、4の十(○印)=18日、神戸市北区の「御所坊」、諫山卓弥撮影拡大山下敬吾名人の封じ手、4の十(○印)=18日、神戸市北区の「御所坊」、諫山卓弥撮影

写真:羽根直樹九段の昼食=18日、神戸市北区の「御所坊」、諫山卓弥撮影拡大羽根直樹九段の昼食=18日、神戸市北区の「御所坊」、諫山卓弥撮影

写真:対局室となった「偲豊庵」。和室の右側に水琴窟がある=神戸市北区の有馬温泉「御所坊」拡大対局室となった「偲豊庵」。和室の右側に水琴窟がある=神戸市北区の有馬温泉「御所坊」

写真:御所坊の離れで対局する山下敬吾名人、羽根直樹九段=18日午前9時6分、神戸市北区、諫山卓弥撮影拡大御所坊の離れで対局する山下敬吾名人、羽根直樹九段=18日午前9時6分、神戸市北区、諫山卓弥撮影

図:最終図(64―140)拡大最終図(64―140)

図:封じ手白64拡大封じ手白64

★名人の横綱相撲〈孫氏の兵法(6)完〉

対局生中継・棋譜中継はこちらから

 山下名人が勝って、名人防衛に近づきました。自分から強く攻めるというよりも、相手の仕掛けに応じながら戦っていたのが印象的です。

 難しい戦いでしたが、左辺白78、80の出切りから82と切ったのが柔軟。そして白88とツイだのは普段どおりの名人の厳しさでした。形勢がはっきりと傾いたのは、挑戦者が左辺黒93の見損じを打ったのが原因です。白94とオサえられて後続手段がありませんでした。地を損したばかりでなく、上辺から中央の戦いにも大きく影響しました。このあと名人は丁寧にまとめて勝利を確実なものにしました。

 ただ、黒番の羽根挑戦者にもチャンスはありました。もっと前の、黒73あたりで左辺黒93のカドに打てば、白は対応に苦慮したでしょう。感想戦では黒のいい図が多くできていましたから、そうなる前に名人は備えが必要だったのです。山下名人の勝ちっぷりは「横綱相撲」という感じでしたが、一瞬、危なかったのかもしれません。

 今回、初めて名人戦のネット解説を担当しました。持ち時間8時間の2日制対局をずっと観戦したのも初めての体験でしたが、普段よりも一手一手が濃いなあと実感しました。いつか、私もこういう舞台で打ってみたいと思いました。2日間、どうもありがとうございました。

■名人、初防衛まであと1勝

 午後5時50分、山下名人が140手までで白番中押し勝ちし、対戦成績を3勝2敗として初防衛まで1勝と迫った。第6局は31日、11月1日、静岡県熱海市で。持ち時間各8時間のうち、残り時間は山下名人が12分、羽根挑戦者が7分だった。

★名人、優勢〈孫氏の兵法(5)〉

 午後5時40分現在、局面は130手くらいまで進んでいます。ヨセ勝負になっていますが、形勢は白番の名人が良さそうです。盤面勝負くらいではないでしょうか。ここから波乱が起きる可能性はないと思います。

★ヨセ勝負の様相〈孫氏の兵法(4)〉

 左辺黒93のカドに打った手は厳しい一着ですが、ひょっとしたら挑戦者に誤算があったのではないでしょうか。というのは検討陣は当初、この一手によって左辺白がコウになると思っていたのですが、少したってから白にうまい応手があることを発見しました。黒95のツギに白96と受けられて、ちょっと損をしました。

 左辺白が安定し、焦点は上辺黒と中央白の競り合いですが、比較的穏やかな戦いとなって、ヨセ勝負に進むのではないでしょうか。

■有馬温泉の3恩人

 有馬温泉は、ほぼ400年ごとに地震の影響を受け、そのたびに復興してきた。その歴史の中で3人の「恩人」が登場した。まず奈良時代の僧・行基(ぎょうき)。701年の丹波の地震の後、民衆のために多くの土木工事を手がけた行基は「有馬の湯が埋まっている」という薬師如来のお告げを受け、724年、有馬に温泉寺を建立したという言い伝えがある。

 次が鎌倉時代の僧・仁西(にんさい)。壇の浦の戦いで平家が滅亡した1185年、京都などで大地震が起きた。仁西は地震の影響で荒廃していた有馬温泉を復興し、薬師如来の十二神将にちなんで12の宿坊を建てたといわれている。

 3人目が豊臣秀吉。1596年の慶長伏見の大地震で甚大な被害を受けた有馬温泉を大規模な改修工事で再興した。

 それから約400年後に起きたのが1995年の阪神大震災。観光客が激減したが、宿泊客だけでなく日帰り客にも温泉と食事を楽しんでもらうサービスのほか、歴史を生かした町づくりなどを進め、活気を取り戻した。

★激しい戦いへ〈孫氏の兵法(3)〉

 剛腕の名人が柔軟な手を打ち、いったんは全面戦争が回避されました。本局の名人はひと味違うなと思ってコメントを書き始めたのですが、ちょうどその矢先に激しい局面に突入しました。

 再開後に打たれた黒73のハネは、左右の黒の一団を連絡しようという手。白が74からそれを阻止しようとするのは当然です。挑戦者は黒77のツギ。ここで白74の一子が動けないようでは白がつらいでしょう。

 名人が力強く白78、80と出切って、検討陣の緊張も高まりました。ところが黒81のアテに白82の切り。もし白84とノビて黒82にツグ展開になれば、とても険しい戦いになっていたでしょう。

 しかし、さすがは名人ですね。白88のツギは本来の攻めの姿勢が前面に出た一着。もちろん狙いは上辺の黒です。挑戦者も負けじと黒89で対抗しました。こちらの狙いは左辺白と、中央白への逆襲。これはとても激しいことになりました。

■秋の訪れを表現した昼食

 正午から昼食休憩に入った。山下名人は今日も昼食はとらない。羽根挑戦者のメニューは「秋の訪れ」を表現したという。きつねうどん(温卵入り)、のり巻き、炊き合わせ(しのだ巻き、明石のタコなど)、天ぷら盛り合わせ(朝鮮ニンジン、ハモ、エリンギなど)。デザートはリンゴと柿。彩りもボリュームも豊かな内容だ。

★挑戦者、脅しの一手?〈孫氏の兵法(2)〉

 名人の封じ手白64にも感心しましたが、挑戦者の下辺黒65のトビもいい手だと思います。左辺黒の味悪さを間接的に防ぎながら、名人が守ったばかりの左辺白への狙いを復活させています。「守らんとやるぞ!」と名人を脅している感じです。

 上辺白66のノゾキに挑戦者は黒67と打って軽く中央へくつろげました。この手はシチョウにカカえられている黒一子の逃げ出しも狙っています。名人の白68はその守り。挑戦者は黒69とツギ、名人は白70と上辺黒に圧力をかけながら地を増やしました。上辺黒はそれほど厳しい攻めを受けることはなさそうで、どうやら本局は「名人の攻め、挑戦者のしのぎ」という展開にはならないのではないでしょうか。

 まだ、左辺に黒からの狙いは残っていますが、息の長いヨセ勝負になる気がします。

■昼食休憩に

 挑戦者が73手目を長考中に正午となり、昼の休憩に入った。午後1時に再開する。

 持ち時間各8時間のうち、残り時間は黒番の挑戦者が1時間38分、白番の名人が3時間25分。封じ手の段階では両者の消費時間は拮抗(きっこう)していたが、黒65に29分、黒67に53分、そして現在考慮中の73手目にもすでに40分以上を費やしているため、挑戦者の残り時間が少なくなっている。

■秀吉しのぶ対局室

 囲碁名人戦第5局の対局室「偲豊庵(しほうあん)」は1995年の阪神大震災からの復興への願いを込め、96年に完成した。完成400年前の1596年には慶長伏見の大地震があり、有馬温泉は大きな被害を受けた。その復興に努めたのが有馬を愛した豊臣秀吉である。偲豊庵は豊臣秀吉を偲(しの)ぶという思いから名付けられた。囲碁名人戦では97年の第22期の第4局で初めて使われ、この時は趙治勲名人が挑戦者の小林光一九段に勝った。偲豊庵は旅館「御所坊」の離れにあり、対局室となっている和室のそばには五つの甕(かめ)を地中に埋めた水琴窟(すいきんくつ)がある。さらにその横には湯殿があり、入浴する人が水琴窟の音色を楽しめる。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏はこの水琴窟の評判を聞き、設計図が欲しいと考案者に依頼してきたという。

★にらみをきかす一手〈孫氏の兵法(1)〉

 おはようございます。棋士の孫英世です。昨日に引き続き、この名人戦第5局の模様をお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いします。

 封じ手白64は左辺のコスミでした。いやあ、感心しました。まったく考えていませんでした。検討陣は棋譜の上辺白Aとコスミツけて黒三子を分断するのが有力と考えていました。あるいはその前に白Bと二線にコスんで自陣を守るのではないか、という雰囲気でした。白Bなら黒Cと受けてもらえるので先手ですが、実戦の高いコスミは先手にはならないでしょう。相手に手を渡した勇気のいる手。私には、じっとにらみをきかす一手に思えました。

    ◇

そん・ひでよ 関西棋院五段。1980年、大分県生まれ。2001年入段、05年関西棋院新人賞。

■封じ手は「4の十」のコスミ/2日目始まる

 2勝2敗のタイで迎えた山下敬吾名人(34)と挑戦者・羽根直樹九段(36)の第37期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)第5局が18日、神戸市北区の有馬温泉「御所坊」で再開され、2日目に入った。

 午前9時から両対局者が前日の63手目までを並べ直し、立会人の坂口隆三九段が封じ手を開封した。山下名人の封じ手白64は、検討陣の予想になかった「4の十」のコスミ。左辺黒への狙いを見ながら、自陣を補強する一手で、遠く上辺黒三子の攻めをにらんでいるのだ。立会人の坂口隆三九段は「名人らしい堂々たる手」と評した。

 どちらが3勝目を挙げ、名人位の防衛あるいは奪取に迫るか。対局はきょうの夜までに決着する。

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