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< 第34期名人戦挑戦者決定リーグ戦第22局  観戦記 >
黒 山田規三生  九段   対   白 趙  治勲  二十五世本因坊

 

人格を変える

2009年6月18日

 ゴールデンウイーク明けの5月7日。雨の朝、日本棋院関西総本部に向かって歩いていると、脇から通りに合流してきた男性が目に入った。傘を広げながら早歩き。誰かはすぐ分かった。朝から赤い顔をしているのは、きっと趙くらいのもの。いったい対局の何時間前から気合を入れるのか、聞きたくなる。

 エレベーター前で趙に追いつく。あいさつのあと、とりとめのない話になったが、新型インフルエンザの話題にはならなかった。ただ、一生懸命笑顔を作ろうとしている様子が伝わってきて、少々申し訳なかった。

 山田もそう。いつもなら彼の話術を楽しみに話しかけるのだが、これから対局ならそうはいかない。改めて思った。対局は棋士の人格さえも変えると。

 ここまで気合が入るのは、山田は挑戦権、趙は残留のために落とせない一戦だからだろう。右下黒5のカカリを迎えた趙がつぶやいた一言は笑いごとではなく、棋士のすさまじさを感じさせる。なんと、「困ったなあ」。

 白6から黒7、白8の流れは最近の流行と書こうとしたが、そうもいかない。趙は白8に34分を消費。流行や人まねを好まない、彼らしい悩みっぷりだ。

 「白8でAは黒B、白C、黒16、白D、黒10の定石になります。外回りの白に傷が残り、黒が打てるとされています」と解説の片岡聡九段。

(松浦孝仁)

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