現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. 囲碁
  4. 名人戦観戦記
  5. 記事

< 第34期名人戦七番勝負第5局  観戦記 >
黒 張栩  名人   対   白 井山裕太  八段

 

スタイルを貫く

2009年11月30日

棋譜 拡大  

 カツンとアゲハマを置く音がして、張栩名人が「負けました」と投了を告げる。この瞬間、20歳の若者が、碁界の頂点に立った。

 ご承知の通り、井山裕太挑戦者が史上最年少で名人位を獲得した。記録更新はなんと44年ぶりのことだ。

 二十数台ものカメラのフラッシュを浴びながら、少し鼻を赤らませてインタビューにこたえる井山。その前で口を一文字に結び、一点を見つめる張。

 前期第7局では、井山が敗者だった。「去年負けた悔しさは、忘れることができませんでした。対局が終わり部屋に戻ると、涙が出て止まらなかった。こんなに悔しかったのはプロになって初めて」という気持ちを昇華させ、すばらしい内容で名人をつかんだ。

 新名人誕生の一局を振り返っていこう。

 名人の初手が注目された。第1局は半目残したが、その後3連敗。流れを変えたい気持ちはもちろんあっただろう。あとがなくなっても名人は自分のスタイルを貫いた。黒7までは第1局と同じ、名人愛用の布陣だ。

 ここで挑戦者のほうが変えてきた。白8に臨むのは初めて見る。たった2分で打たれたので、研究済みかと見られていたが、「思いつきに近いです」と挑戦者。

 名人は背を丸め、みけんをつまんだ。対局場には、鳥のさえずりだけが響いていた。

(内藤由起子)

[次の譜へ]

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内