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< 第35期名人戦挑戦者決定リーグ戦第13局  観戦記 >
黒 高尾 紳路  九段   対   白 小県 真樹  九段

 

津波の源

2010年4月8日

 日本から見てほぼ地球の裏側にあたる、南米チリで起きた2月末の巨大地震。それに伴う津波は約1日かけて日本にも到達した。そのエネルギーには驚くばかりだが、メカニズムは別にして、愛棋家なら意外にすんなり理解できる現象だろう。盤の隅っこでの出来事が盤全体に影響することは日常茶飯事。逆に部分的な現象で治まることのほうが珍しい。

 高尾3勝、小県3敗でむかえた本局。序盤の、小県の何げないように映る一着が、盤上の景色をガラリと変える。それは大きな津波のようになって、そのまま小県はのみ込まれてしまう。実は、その問題の一手は、すでに盤上にあるのだが。

 黒7まではよく見る布石。白6は7やAだって悪くはない。左辺は黒石が一つ多い状況なので、白6でBなどのハサミはやりづらい。黒7に白8は当然。これで左辺は白石が一つ多くなった。したがって、黒もCと競り合うところではない。黒9と構えて、それから黒Cを狙うのが自然な流れだ。ここで、黒11に注目。

 「左上白の勢力を警戒し、左辺の荒らしも狙っています。ただし、黒11はいちばん手堅い。黒Dと一路進めたくなるところです」と解説の三村智保九段。ここで黒の手堅さを逆手に取れば、高尾の心は大きく揺れたかもしれない。そのタイミングは、白20の時だった。

(松浦孝仁)

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