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< 第36期名人戦七番勝負第1局  観戦記 >
黒 山下敬吾  挑戦者   対   白 井山裕太  名人

 

鼓動

2011年10月6日

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 自分自身の鼓動が聞こえるほど緊張する場面はそうそうない。運動会でかけっこの順番を待つ間、眠れない受験前夜、それから初恋の人を想(おも)うとき。七番勝負にのぞむ棋士も、特に開幕戦では、相当な緊張感に包まれていると想像するのだが、これまでそれを証明する出来事には遭遇していない。

 1日の朝。挑戦者の山下敬吾挑戦者は普段の手合と変わらない表情。井山裕太名人も22歳とは思えない立ち居振る舞いだ。ところが白2を打つ際の名人の指先はかすかに揺れているように見えた。

 「わたしは名人の鼓動をはっきり感じました。落ち着いているようでも見た目ほど冷静ではいられないものです。ただ、緊張で硬くなっているのとはもちろん違います。気持ちが高ぶるのは当たり前。武者震いですよ」こう教えてくれたのは本局解説の張栩棋聖だ。反対に、挑戦者は鼓動を解説者に感じ取られなかった。それは32歳、ベテランの域に入ってきたからだろうか。

 では盤面へ。黒は5のカカリ一本から7の一間ジマリへ。碁盤を広く使う、挑戦者得意の布陣だ。黒5の一子を白がハサんできたらハサミ返して戦いに引きずり込む。

 名人は穏やかに白8の割り打ちへ。以下黒13までは一本道に映るが、解説者はこんなことを言い出した。「黒のまとめ方、難しいですよ」

(松浦孝仁)

 消費 黒:15分 白:16分 (持時間各8時間)

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