< 第37期名人戦七番勝負第7局 観戦記 >
羽根直樹 挑戦者
対
山下敬吾 名人
常磐ホテルにやってくる鳥の一番人気はカワセミ。対局室に面した池のそばの松に止まり、一瞬の機をとらえて猛烈な勢いでダイビングする。こうしてハヤや小さなコイもつかまえるという。もちろん失敗もある。
こじつけかもしれないが、名人の動きはカワセミに似ていると思う。素早く動いて△の両ノゾキを実現させ、白68の切断に成功した。食うか食われるかの戦いだ。
白76までを必然として、いずれ白A、黒B、白Cの両断にものをいわせる腹づもりだろう。検討陣は名人の構想に驚きと賛意を表したものの、攻めは不発に終わると予想した。上辺が薄いからだ。しかし挑戦者が28分を投じた黒77を見て、微妙に空気が変わった。
内田「参考図の黒1とツケたらどうだったか。白二子を取れば黒が分かりやすい。白2と助ければ黒3以下のシボリが決まり(8ツグ)、21に回って黒よしと思います」
長手順の図はご容赦を。中央の両断を防ぐためにも、シボリは有力だった。
(春秋子)
消費 黒:5時間4分 白:4時間47分 (持時間各8時間)
第38期囲碁名人戦七番勝負で2年前の雪辱を果たし、名人位を奪還した井山裕太名人の記念扇子。「碁を楽しむ」という意味で「碁楽」と揮毫(きごう)されています。