< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第19局 観戦記 >
村川大介 七段
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井山裕太 棋聖
4月11日、大阪・梅田の日本棋院関西総本部。観戦するのが楽しみな好カードだった。いや、記者よりも両対局者のほうがこの日を待ち望んでいたかもしれない。
井山裕太の師匠の石井邦生九段からうかがった10年以上前の話を紹介しよう。小学4年の院生だった井山少年は、既存の研究会に入ろうとせず、自分で研究会を立ち上げてしまった。これが現在に続く井山研究会である。
スタートしてしばらくは先輩ばかりの研究会だったが、やがて年下の仲間ができた。そのひとりが関西棋院の村川大介少年だった。以後、村川は1歳上の井山の背中を追いかけてきた。
もちろん、実績の差は大きく、前を行く井山の背中を見失うことがしばしばだったと思う。それがいま、名人戦に関して、リーグという同じ土俵に立ったのだ。村川の弾む気持ちも、井山の待っていたぞとの思いも当然なのである。
先番村川の黒7の構えから白14までは流行の序盤。続く黒15のトビを解説の山田規三生九段は「スケールが大きく力強い」と評価する。白16から黒21を想定し、いずれ白は黒模様に入ってくるに違いない。それを攻めて主導権を握る方針だ。
本局は各譜の終わりにいくつか次の一手を用意した。さて井山の白の次の一手は? 白Aと助けるのは黒Bでまずい。
(春秋子)
消費 黒:29分 白:19分 (持時間各5時間)
第38期囲碁名人戦七番勝負で2年前の雪辱を果たし、名人位を奪還した井山裕太名人の記念扇子。「碁を楽しむ」という意味で「碁楽」と揮毫(きごう)されています。