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< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第21局  観戦記 >
黒 井山裕太  棋聖   -   白 坂井秀至  八段

 

打ち破れ!

2013年6月6日

 5月2日。井山は前週、十段位防衛に失敗して五冠に後退していた。朝、なんて声をかけようか少々迷った。結局、「体調はどうですか」というありきたりなあいさつに。するとメタボ体形の記者を気遣う心配りと共に、「大丈夫です」。対局前とは思えないトーンの高い声が返ってきた。そこにはいつもの朗らかな井山がいた。

 坂井も、いい流れの中にいるとはとてもいえない。ここまで白星なしの5連敗。この碁に敗れると早くもリーグ落ちが決まる。

 精神的につらい状況で、どう現状を打ち破るのか。おもしろいことに、両者がこの碁で目指したスタイルはまったく同じだった。

 黒7はAのミニ中国流より地にからい。白Bには黒Cで応戦するのが最近のはやりだ。

 右上の定石は昭和の香り。黒石が二線に5個も集中してつらいように思えるが、白の姿もダンゴでスマートじゃない。マイナスとマイナスが相殺されて互角なんだとか……。

 左下、黒21に白22は布石の要点だ。

 「白Dに受けるのは黒Eがバランスのよい構え。上辺から左辺がなかなかの模様です。反対に下辺は白20の一間ジマリがスソアキなので、地に関しては甘い。だから白は22と、隅よりも下辺への展開を優先しました」と解説の金秀俊八段。

 黒23。記者はこれを井山の意思表示と受け取った。

(松浦孝仁)

 消費 黒:19分 白:21分 (持時間各5時間)

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