< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第25局 観戦記 >
張栩 九段
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井山裕太 棋聖
6月1日、異例の土曜対局だった。リーグは原則、木曜に組まれ、月曜が予備日に設定されている。五冠王井山の過密日程がうかがいしれる。
全勝の張と1敗の井山による大一番。注目を集める対局は一方的な内容で終わるケースも珍しくないが、この碁に関しては要らぬ心配だった。局後の検討で両者が「難しい、分からない」と何度口にしたか。瀬戸大樹七段の解説で楽しもう。
黒1から7の布陣に白8のカカリを迎えた張は、左上黒9に向かう。白10には黒11以下の定石を選択。実利先行の意思表示だろう。井山は白18の両ガカリから22の押しへ。こちらは自己の主張を後回しにして、盤上の流れに身を任せている。左上の勢力を働かせるためには、この地点は逃せない。
瀬戸「白22でよくあるA、黒23、白24、黒25、白Bは、黒22のマゲが絶好。左上白がかすみます」
黒23で26なら、今度こそ白Aと入るつもり。これはさすがに黒が甘いのだろう。
張は左上での方針を引き継ぐ。黒23を決めて25と、貝のように閉じこもった。白26とハネられて、容易に外界へは出ていけない。この定石、白よしと教わった読者は少なくないのでは。現代でも、部分的には白持ちの声が大きい。張があえてこの姿に甘んじたのは、黒27を見ていたからだ。
(松浦孝仁)
消費 黒:19分 白:42分 (持時間各5時間)