< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第26局 観戦記 >
坂井 秀至 八段
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結城 聡 十段
「こんな形で結城さんと打ちたくはなかった」――。局後、記者を食事に誘った坂井の第一声である。
兵庫県出身の41歳結城と40歳坂井は、小学生時代から互いを知る間柄。ともに故佐藤直男九段門下で、故藤沢秀行名誉棋聖の薫陶を受けた。
12歳で関西棋院のプロになって若い頃から活躍した結城に対し、坂井は京都大学医学部に進学し、アマチュア世界一に輝いた後に28歳で同棋院のプロに転じた。道のりこそ大きく違うが、2人は絶えず支え合い、刺激し合ってきた。
前局に負けて6戦全敗となった坂井は、すでにリーグ落ちが決まっていた。結城は5戦全敗の崖っぷち。坂井が勝つと親友に引導を渡すことになる。まさしく同士打ちだった。
坂井はつらい気持ちをこらえ、積極的な打ちまわしを見せる。その一局を見ていこう。
左上は白16に続いて黒AやBが本手。しかし坂井はそれを省き、下辺黒17へ向かう。黒21と白の進路を止め、左辺に模様が浮かび上がった。「21は坂井君らしからぬ伸び伸びとした手ですね」と評するのは解説の小松英樹九段。坂井の棋風を堅実派ととらえている記者も同感だった。
白が22と手堅く打てば黒23、25で相手を凝り形に導こうとするのはうなずける。白が隅を放棄して30と外へはみ出すのも当然の行動だ。
(伊藤衆生)
消費 黒:25分 白:57分 (持時間各5時間)