< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第27局 観戦記 >
溝上 知親 八段
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河野 臨 九段
今期の挑戦者レースは、いつもと様相が異なる。本局の打たれた6月20日の時点で、6戦無敗の張栩が大きくリードしているのは疑いないとしても、1敗の羽根直樹から2敗組の井山裕太、河野臨、高尾紳路の上位4人にも挑戦の可能性がある。半分以上のメンバーがリーグ終盤まで競り合うのは極めて珍しい。
一方、下位4人のうち、すでに坂井秀至、結城聡のリーグ落ちが決まり、溝上知親も苦しい状況だ。しかし負けられないプレッシャーの中で、大胆な新趣向を披露してくれた。
河野好みの白8に黒9と一間にシマり、白10の割り打ちに黒11とツメたところまでは近ごろよく見かける序盤である。黒13のコスミツケも白が二間ゆえ、常識的だろう。13ではほかに黒16とケイマでアオるのも時折打たれている。
問題は黒15の大ゲイマだ。これが記者室のモニター画面に映し出されると、「びっくりだね」「初めて見た」と、午前中から騒がしい。15は1分の考慮時間なので、予定の行動だったか。なぜ黒Aの一間ではなく、大ゲイマなのか、局後溝上に問うと、「似た局面で前に一間をやったのですが、うまくいかなかったから」という。
大ゲイマで気になる白Bの三々は、今なら黒Cとサガって戦うつもり。白16以下と強化されたあとでは、黒Dと譲歩することになる。
(春秋子)
消費 黒:1時間6分 白:57分 (持時間各5時間)