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< 第38期名人戦挑戦者決定リーグ戦第32局  観戦記 >
黒 結城 聡  十段   -   白 溝上 知親  八段

 

難解を避ける

2013年8月28日

 ちょっと大げさかもしれないが、対局前の溝上を見ると、大リーグのイチロー選手を思い浮かべてしまう。イチローは毎回、同じように素振りやストレッチをして打席に入る。同じことの繰り返しが、いい精神状態を生んでいるに違いない。

 動作を繰り返すイチローに対して、溝上は「静」を守って対局を待つ。長いときには5分以上、目を閉じたままで胸を張り、背筋をピンと伸ばして相手と対峙(たいじ)する。伏し目がちに盤上を見つめる多くの棋士よりも「無心」に近づいているように見える。

 7月18日。この日の溝上は猛暑に心を乱された。冷房の効きが悪く、暑さに何度も目をあけ、扇子を開かずにはいられなかった。午前10時、心を落ち着かせる時間がほとんどないままブザーが鳴る。残留へ、絶対に落とせない一局が始まった。

 黒番の結城は5、7の両ガカリから11とツケた。「白18ではAとオサえ、黒Bと動く難解な変化になることが多い。白は分かりやすく打ちました」と解説の趙善津九段。

 黒19のスベリは堅い一手。これを省いて白Aとオサえられても黒Cで十分戦える。部分的にも、黒D、白E、黒Fで生きがある。黒19は、Gのシマリに向かうのがふつうだという。18、19などによって、落ち着いた立ち上がりになった。

 白は28で先手を取って30へ。

(内藤由起子)

 消費 黒:49分 白:42分 (持時間各5時間)

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