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 ここ数年の張をみていると、ゴルフ選手の中嶋常幸を連想してしまう。1980年代に活躍し、ライバルの青木功、尾崎将司らと多くの名勝負を残した。3人の頭文字をとって「AON」時代といわれたように、当時の中心選手だった。

 そのスイングは世界でも5指に入る美しさといわれていた。しかし、ある時期からスイング改造に取り組む。そしてしばらくの間、低迷することになる。改造なんてしなければという声が多く聞かれたものだ。

 張に棋風改造の兆しが見えてきたのは2010年、山下敬吾に挑戦した棋聖戦だ。前年暮れの天元戦で山下に敗れ危機感を覚えたか、それとも感化されたか。それまでの実利優先のスタイルが影を潜め、厚み、勢力に重きを置いた布石を採用。見事タイトルを奪取した。改造は成功と思われたが、その後の成績はいま一つ。棋聖は以降3連覇したものの、名人戦七番勝負には09年の第34期以来ご無沙汰。現在は無冠だ。

 この碁でも改造の跡が見て取れる。三線を主体にした石組みを目指す羽根に対し、張は右上で両ガカリから三々には入ったものの、直後に白22と手厚いマゲを選択している。

 記者は正直驚いた。黒は23、25と入ってくるに決まっている。最後の大場を献上するようなものではないか。白22の意図はすぐ明らかになる。

(松浦孝仁)

 消費 黒:1時間13分 白:27分 (持時間各5時間)

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