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 名人戦リーグは中盤戦たけなわ。少しずつ挑戦者候補が絞られてくる時期だ。本局はリーグ復帰同士の顔合わせ。柳は勝てば白星二つの貯金となる。リーグ序列は最下位でも、挑戦権を十分狙える位置だ。黄もここは急所の一局だろう。負けると黒星先行。以降は挑戦よりも残留を意識しての戦いになる。

 この一戦は、ひょんなことから明暗を分ける。序盤早々に一度、中盤にもう一度。この2度目の「ひょん」が勝敗に直結することになるのだが。さっそく盤面を見ていこう。

 白8までの手順は記者でも経験がある。次の黒の一手はたいていAもしくは11。そう教わってきた。しかし世界の潮流は黒9のコスミツケだと、解説の大矢浩一九段はいう。

 「昔は、黒9のような序盤から隅で縮こまる手は怒られたものです。発祥の地は中国。とにかく実利を意識した着想が増えました」

 白12と下辺を占められると黒7の一子が孤立する。黒9と白10の交換は明らかに黒7を弱体化させた。ただし、黄も当然この進行は読みの中にある。黒13と動き、白14のトビ越しに黒15のノゾキは予定の行動だろう。

 黒の注文は、Bとツガせて白を棒石にし、攻めること。また、白C、黒D、白Eと薄みを突かれるのを防いだ手でもある。

 黒15は1分の考慮。これが変化のきっかけだった。

(松浦孝仁)

 消費 黒:18分 白:11分 (持時間各5時間)

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