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 4月14日、日本棋院東京本院「幽玄の間」。開始5分前、先に着座した山下は、盤上を拭き清めてから静かに定刻を待った。目は閉じているが、みけんにしわを寄せ、険しい表情をしていた。

 1週間前の7日、同じ部屋で本因坊戦の挑戦者決定プレーオフがあり、山下は伊田篤史七段(現八段)に負けた。全勝で3日のリーグ最終戦を迎えたが、1敗の伊田に負けて並ばれ、プレーオフでも敗れたのだった。

 名人戦も一人全勝を走る。きょうの相手は1敗の河野。リーグ中盤、シード1、2位による天王山の一局だ。同じ部屋で味わったばかりの苦い負けの記憶がよみがえったのか。気持ちを切り替えなくては。そんな思いが表情に出ていたと思う。

 午前10時、ブザーが鳴り終わるのを待って黒番の河野は初手を右上星へ。黒11のカカリからすぐに13と三々に入るのは、最近の流行だ。山下は白16からオサえ、20を急いだ。

 手広い局面で選択肢が多く、序盤から一手一手が悩ましい。

 「白22とシマった手で、私なら黒23の打ち込みを防ぐ白Aのトビを選びます。白28のスベリは白Bからツメたい。ただ、白Bに黒はCとオサえることになる。山下さんは右上白が薄くなるのを嫌ったのでしょう。いろいろな考え方がありますからね」と解説の小林光一名誉名人。

(内藤由起子)

 消費 黒:19分 白:39分 (持時間各5時間)

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