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 「シチョウ」は入門とほぼ同時に教え込まれる石を取るテクニックだ。アタリ、アタリと相手の石をどこまでも追いかけて仕留めるあの喜びは、囲碁の魅力を凝縮しているようにさえ思える。

 ただただアタリを繰り返していく単純作業ではあるが、シチョウを巡る駆け引きは時にたいへん複雑なものになる。両者2勝3敗のちょっぴり苦しい星取りで迎えた本局は、まさにシチョウが勝敗のカギを握っていた。

 黒番・黄の中国流に羽根は白6、8と下辺に展開。黒9は右上12とシマるケースが多いが、黄は流行に左右されないタイプなのだとか。白12に手を抜いて黒13とカカったのも彼らしい選択。黒16の受けなら白23の三々入りがあちこちで見かける進行だ。

 白14の両ガカリに黒15とコスミツけたのは、16と立たせて重くする狙い。それから黒17、19と攻めの態勢につく。白は20から28と隅に食い込み、黒の出方をうかがう。ここまでは珍しい進行ではない。定石書に必ず載っていそうな変化だ。

 黒の次の一手から、本局は延々とシチョウを意識した戦いを余儀なくされる。左下、黒29に注目だ。

 「相手をかなり強化させるこのノゾキは、通常、決め手になるような時以外は打ちません」と解説の張豊猷八段。黄の意図はいったいどこにある?

(松浦孝仁)

 消費 黒:22分 白:12分 (持時間各5時間)

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