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 20年近く前、私がまだ観戦記者として駆け出しの頃、対局開始前のひとときが楽しみだった。部屋に対局者が1人しかいないとき、小林光一名誉名人や加藤正夫名誉王座ら大棋士からよく声をかけられ、世間話をした。

 最近は、対局前に話す棋士は少なくなったが、結城は一言二言、話しかけてくる。話題はほぼ野球だ。

 6月5日、東京・日本棋院「清風の間」でもそうだった。10分前、先に座った結城は、かばんから写真の束を出すと、「これ……」といいながら私に手渡してくれた。

 第24局で松浦記者が話題にした結城のプロ野球始球式。その写真だった。結城の投げたボールは見事、ノーバウンドでキャッチャーまで届いたそうだ。「遠投の要領で、力まないように気をつけて投げた」と結城。写真を私が見終わるころに、ちょうど山下が入室。対局室が、しんとした。

 名人戦リーグで結城はいまだ1勝のみ。残留に向け、もう一つも落としたくないはず。本局は投球のように力まず臨めるだろうか。

 黒番の山下は盤の右側、白番の結城は左側に模様を張る序盤戦。結城は白16に40分を投じた。「16は、白A、黒16、白Bと仕掛ける選択もあったでしょう。実戦は左辺の模様を重視しました」と解説の依田紀基九段。

 白18までとなった場面。次の着点は難しい。

(内藤由起子)

 消費 黒:24分 白:1時間5分 (持時間各5時間)

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