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 6月5日、柳時熏九段が、羽根直樹九段の所属する名古屋の日本棋院中部総本部へ出向いての一局。2敗の柳は挑戦の可能性を残していた。

 さっそく盤上に注目していただく。黒7のツケに白8と二間にはずすのは、大流行の手法だ。記者室に戻り、東京対局の中継を見ると張栩九段―黄翊祖八段戦(第25局)にもこの手法が現れていた。

 白8は、記者もネット碁でよく試みる。昨年、週刊碁に詳しい用法が連載されたときには、食い入るように読んだものである。

 いくら人気とはいっても同じ日に名人戦リーグで2局。これでは妙味がないのでは、と思っていたら、黒11という新鮮な手が飛びだした。記者の記憶にはなかったツケだ。

 柳も初めて見たという。しかしさすがはプロ。19分で変化を読み切り、白12とハネる。できあがった白24までが定型だという。

 解説の小県真樹九段によると、この分かれは、実利を稼いだ黒よりも手厚い白に不満がないとされる。局後、黒11と仕掛けた羽根がおかしなことを言う。「以前に打ったこともあるけれど幸せになったことがない。黒が悪いですよね」。つまり確信犯というわけだ。

 しかし本当に悪いと思うなら打つはずはない。羽根は地にからい棋風で、しのぎも得意。案外、別の評価をしているのかもしれない。

(伊藤衆生)

 消費 黒:28分 白:1時間3分 (持時間各5時間)

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