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 序盤早々、わが目を疑った。白6が見慣れないところにあるではないか。記録係は位置確認のため首を伸ばしてのぞきこみ、相手の山下敬吾は座り直す。

 もちろん置き間違いではない。張栩が白6に要したのは2分。その場の思いつきではなく、これで行こうと決めていたのだ。しいていうなら、星への「上(うえ)大ゲイマガカリ」か。大模様にのぞむ場合、消しの手段として用いられることはあっても、こんな早い段階での白6は初めてだ。新手と断定して差しつかえあるまい。

 局後のやりとりが面白い。「最近白6にはまっているというか、研究しているんですよ。ネット碁でもこればかり」と張がいえば、山下は「知らなかった。さっそく勉強します」。

 7月3日、東京・日本棋院。朝から外野席は騒がしい。「気楽な立場だから好き勝手ができる」との声があったが見当はずれと思う。山下の独走をストップさせれば1勝差となり、最終ラウンドの結果次第で張が挑戦者に躍り出るかもしれない。気楽とは正反対の必死の一番なのである。

 しかしこうはいえるだろう。張がタイトルをかき集めていたころなら「生活感がない」の得意のセリフで白6を一蹴したのではないか、と。実利派から張の碁は大きく変わったのだ。

 白10の高いツメも、6の延長線上にある独特の世界だ。

(春秋子)

 消費 黒:14分 白:11分 (持時間各5時間)

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