[PR]

 黄にとっては本局が今期リーグ最終戦。負ければ即リーグ落ちが決まる。勝ったとしても3勝3敗の柳時熏九段に一つでも勝たれてしまうと陥落する。きわめて危うい状況だから、慎重に手を選ぶ、進行の遅い碁になると思っていた。

 7月3日、東京・日本棋院「幽玄の間」。その予想はまったく当たらなかった。

 黒1、3のタスキ型を高尾は好んで打つ。黒7とハサんだあと、上着を脱いで腕まくりをし、さっそく戦闘モードに入った。

 白8のコスミは、この配石では珍しいという。「白AやBなど、右上から動くのが普通です。黄さんは常に工夫するタイプ。人まねが好きではないので、流行の布石にはほとんどなりません」と解説の蘇耀国八段。盤上はすでに見たことのない形になっているが、着手は速いテンポで進む。

 白10のツケから見慣れない変化が起こる。高尾は9分考えて黒13とノビた。ここは「2目(にもく)の頭、見ずハネよ」の格言どおりに、目をつぶってでも黒Aとハネるべきではないのか。

 蘇「僕の若い頃は、こんなケースでは黒Aの一手しかないと教えられ、それ以外を読まない風潮があった。いまはだいぶ囲碁界の考え方が変わりましたね。筋に明るい高尾さんほどの本格派でも、ハネを選ばない時代になったのですから」

(内藤由起子)

 消費 黒:16分 白:10分 (持時間各5時間)

[ 次の譜へ ]