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 読者は挑戦権争いの劇的な結末をご存じのはずだ。筋書きのないドラマを見るような展開だったと思う。

 その幕開きがセミファイナルラウンドの山下敬吾―張栩戦(第29局)だった。勝てば挑戦者決定の山下が、コウまたコウの大激戦の末、張に屈して初黒星を喫した。

 これに元気づいたのが河野臨である。あきらめかけていた挑戦者の座が、依然として他力頼みながら、手の届くところにある。おりしも公式戦17連勝中と絶好調。4月の名人戦リーグで山下に敗れてから負け知らずだ。

 山下―張戦の1週後の7月10日、日本棋院東京本院7階の椅子席対局室で、ドラマ第2幕ともいうべき河野―柳時熏戦が行われた。リーグ前半は挑戦権争いに加わった柳だが、後半は勝ち星にめぐまれず、リーグ残留が未確定の状態。それぞれ必勝の思いを胸に、布石は静かに進む。解説は久しぶりに武宮正樹九段がつとめる。

 「黒5は河野くん好みの一間ジマリ。とくに最近の黒番はほとんどこれです。黒7はいま風かな。ひと昔前まではAやBが絶好の大場とされたのですが」

 白14のスソガカリから定石らしきものが現れた。注目していただきたいのは、白Cのアタリがくる前に抜いた黒31。解説者は「上品ですね」とひとこと。手を渡して白の出方をうかがい、なるほどおくゆかしい。

(春秋子)

 消費 黒:42分 白:1時間11分 (持時間各5時間)

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