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 日本棋院東京本院の「幽玄の間」。先に着座した山下はいつも通り目を閉じて定刻を待つ。みけんにしわを寄せ、険しい表情だった。

 最終一斉対局の大一番。山下はあと1勝で挑戦者というところまで全勝で走っていたのに、前局を落として足踏みをした。いまだに「マジック1」にかわりはないが、本局で敗れればプレーオフは必至。正念場の一局だ。

 今春、山下は本因坊戦リーグで全勝だったのにもかかわらず最後に失速し、挑戦権を逃した。悪夢を繰り返すわけにはいかない。

 村川にとっても大事な一局だった。本局に勝って、大阪対局の結城聡―柳時熏戦で柳が負ければ、リーグ残留が果たせる。第33局でお伝えしたように柳は敗れたが、もちろん村川がこの結果を知るのは、本局を終えたあとのことだ。「5敗した時点で残留はできないと思っていました。でも、最終局で勝てば、なにか次につながるはず」。そう思って臨んだという。

 右下、白6から黒19までの形は昨年の棋聖戦七番勝負第6局(張栩棋聖―井山裕太挑戦者)で打たれている。井山が史上初の六冠を達成した一局だ。白は色々な利きを見られている。周囲の状況は少し違うが、その時、白番の張はすぐに白Aと手厚く抜いている。

 山下は白20と打ち込んだ。早くも激しい戦いになりそうな雲行きだ。

(内藤由起子)

 消費 黒:47分 白:46分 (持時間各5時間)

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