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 名人先勝のあとを受けた第2局は鳥取県湯梨浜町、東郷湖西岸に位置する、はわい温泉「望湖楼」が舞台。棋聖戦、本因坊戦も行われた旅館である。

 9月18日午前9時、真っさらな碁盤の上で名人の白い左手が舞った。いちばん遠い右上隅へゆっくりと腕を伸ばす。小指が立つのが特徴で、手が湖上を遊ぶ鳥のように見えた。ここから手をいっぱいに広げて着手する。

 名人のこの所作は、第一着の時、ひときわ優雅に、かつダイナミックに感じられる。挑戦者は自然な手つき。比較的、石を静かに置くタイプのようだ。

 左下黒5のカカリに手を抜き、白は右下6のカカリにまわる。素直な白Aの受けは、黒BやCなどと構えるのが流行。挑戦者がそれを邪魔した格好になった。名人がバチンと力強く打ちつけた黒7の下ツケも、この布石では珍しいという。気合上、すぐ左下に連打したくなるところを、冷静に右下で地を稼ぐ。まだ、さざ波ほどかもしれないが、すでに具体的な駆け引きが始まっていた。

 8階対局室から見下ろすと、湖面が朝日に照らされ、きらきらと輝いていた。はわい温泉は、この静かな湖の底に源泉がある。

 本局は、両者が序盤から惜しみなく時間を使って深い読みを入れた。そこからわき出た熱くたぎる思いを盤上にぶつけた大激戦になっていく。

(伊藤衆生)

 消費 黒:12分 白:35分 (持時間各8時間)

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