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 せみしぐれの東京から始まって、鳥取、北海道、京都と転戦するにつれ、秋は深まり、肌寒さを感ずるようになった。逆に名人戦は熱くなる一方だ。

 序盤から深刻な読み比べが続く。布石があって中盤戦へと進み、ヨセで終わるという昔からの常識は通用しない展開ばかり。両者とも読みに自信があり、かつ負けず嫌い。もう一つつけ加えると失敗を恐れぬ勇気の持ち主だから、どうしてもこうなるのだろう。

 2勝2敗で迎えた第5局は10月15日、雨の静岡県熱海市「あたみ石亭」で1日目が始まった。名人が先に離れの自室から傘をつかって対局室に現れる。あざやかなウメモドキの朱色の実が生けられた床の間を背に、碁盤を拭き清め終わると挑戦者入室。天王山と意識しているのか、どちらも表情が硬い。

 午前9時、立会人の小県真樹九段が開始を告げると同時に、挑戦者の手が右上に伸びる。さてどんな立ち上がりになるか。報道陣が退室すると、名人はいつものように上着を脱ぎ、早くも戦闘態勢に。この秋一番の冷え込みとかで対局室には暖房が入っている。

 黒7、9のナダレ型は今シリーズ初出。白10に名人が17分費やしたのは、Aとハネる小ナダレ定石を考えたためかもしれない。

 左上を手抜きして黒11とシマり、挑戦者は右下で試したい手があった。

(春秋子)

 消費 黒:13分 白:23分 (持時間各8時間)

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