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 10月29日、開始4分前に名人が対局室に姿を現し、続いてすぐに挑戦者が着座した。

 名人が防衛まであと1勝と迫って迎えた第6局。名人位の行方が決まるかもしれない大一番なのに、両者からぴりぴりとした雰囲気は感じられなかった。いつも通りの淡々とした表情で、座椅子の位置を調整したり腕時計を外したりしながら、開局を待った。

 午前9時、立会人の片岡聡九段が開始を告げると、名人はひと呼吸おいてから、ゆったりと左手を碁盤の右上へと伸ばし、第一着を打ち下ろした。

 ご承知の通り、本局を制した名人が2年連続4期目の名人位を獲得した。その決定までの道のりを詳しく振り返っていこう。

 対局場は長野県諏訪市にある上諏訪温泉「油屋旅館」。6階の対局室からは、諏訪湖と雲ひとつないほどのまっ青な空が見えた。

 左辺黒3、5、7の構えは、最近よく見かける。しかも8日前の王座戦五番勝負第1局で、井山名人(王座)は挑戦者の村川大介七段と黒11まで同じ布石を試みていた。その時は続いて村川が白Aとカケツぎ、井山が黒Bと迫った。

「A、Bの進行はまだ結論の出ていない変化です」と解説の秋山次郎九段。

 挑戦者はもちろんこの碁を知っている。ノータイムで白12とカタツぎ、分かりやすい図を選んだ。

(内藤由起子)

 消費 黒:9分 白:9分 (持時間各8時間)

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