写真石田秀芳・二十四世本因坊

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 七冠独占を視野に全力で突き進む井山名人と、充実期を迎えた河野挑戦者。両者はこれまで五番勝負での対決はあるが、2日制七番勝負は初めて。とても新鮮な顔合わせになった。

 井山さんは昨年、大三冠を達成。今年、棋聖、本因坊を防衛し、この防衛戦で勝てば、それがもう一巡りすることになる。大三冠の「トリ」だからね、絶対に勝ちたいと思っている。

 河野さんは挑戦者決定リーグ戦で早々と2敗したが、全勝の山下敬吾九段が最後に崩れた。リーグ終盤に負け数が2差あって、そこから逆転なんて普通は考えられないけれど、これが2年連続で起きた。「神様のいたずら」かな。その幸運で前期に挑戦者になったのは井山さん。井山さんとしては1年前の自分を見るようで、ある意味のやりにくさがあるのではないか。

 河野さんは何度も大事な一局で負けた経験があり、精神的に鍛えられてきたと思う。それが今回、苦労して最後に挑戦権を手にした。過去の対戦成績で見れば井山有利。そして、直前の両者による碁聖戦五番勝負の結果も影響はあるだろうが、河野さんには十分にチャンスのある七番勝負になるだろう。

 井山さんの今年の対局数は30局に満たない。六つもタイトルがあるのだから少ないのは仕方がない。調子は決して悪くない。いまは圧倒的な読みの力で勝負している印象で、過激すぎるくらいに着手が厳しい。河野さんはすでに40勝以上を挙げ、途中には19連勝もあった。絶好調だ。もともと力戦型の打ち手だけれど、実利を優先する傾向が出てきた一方で、大胆な踏み込みもみせる。井山さんと同じく読みに自信を持っている。

 波長は合っているので、読み比べで、互いが「どうだ」と張り合う展開が多くなるだろう。剛腕で知られる前名人の山下さんも激しい碁を打つけれど、ヨセ勝負になることまで見越して戦っている部分がある。井山―河野戦はそうではなく、ほとんどは「中押し」(どちらかの投了)で決着している。

 ポイントを稼ぐだけで戦いが済むとは思えない。生きたら勝ち、取られたら負け。そんな焦点のはっきりした激闘が見られるでしょう。