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 立春の翌日の2月5日。東京は寒く、空模様があやしい。対局開始の午前10時には雪が激しく舞い始めた。

 名人戦リーグの全9ラウンドを序盤、中盤、終盤と分けると、第3ラウンドは序盤の最終戦である。連勝スタートの高尾は、ここで白星を加えるようだと、挑戦権争いをリードして中盤を迎えられる。逆に1敗を喫すると混戦状態。つまり序盤急所の一番なのだ。

 「お願いします」と張が声をかけて黒1を打ちおろすと、高尾は息で手を温めるようなしぐさののち、白2へ。記者はなぜか江戸中期の〈年寄の碁石怖がるさむさかな〉という句が浮かんだ。寒いと碁石が冷たい。冷たいと碁石に触れるのがこわくなる。38歳の高尾を年寄りあつかいして申しわけないが、羽根直樹と並んでリーグ最高齢である。

 いつも工夫した布石を見せてくれる張は、二連星から黒5のヒラキ。右上黒23までの定石も予定どおりかもしれない。じつは下敷きになる碁があった。約1カ月前の本因坊戦リーグ・三村智保戦で、張は23ではなく、黒Aにカケツいだ。Aなら辺は地になりやすい半面、凝り形のおそれがある。白24、黒25に続いて白Bの肩つきがぴったりした。その反省を踏まえて外側のカケツギを選んだのだろう。

 右下も定石。張はCの部分的な本手ではなく、黒33と足を速めた。

(春秋子)

 消費 黒:7分 白:16分 (持時間各5時間)

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