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 位置を間違えないためだろうか、蘇が初手を置くときの様子はかなり不自然だった。首をひねって頭を下げ、碁石を持つ右手をほぼ真横からのぞき込んでいた。そうして打たれたのが「15の七」の黒1だ。碁界で大きな話題となっている。

 張栩九段と蘇によって、この奇妙な序盤作戦は世に放たれた。黒1から3、5、7と等間隔に配した構えに、張は「ブラックホール」と命名した。なるほど、天元に向かって吸い込まれていくイメージが沸いてくる。蘇が黒番でこの4手を完成させれば勝率はいまのところ100%。逆に阻止されると勝率0%だという。

 初めて名人戦リーグに入った蘇は連敗スタート。得意の戦法で必勝を期したのは当然とも思えるが、宇宙空間のブラックホールと同様、未知の部分が多々ある。そのあたりでの黄との駆け引きは本局の見どころの一つだ。

 それにしても用語の使い方が悩ましい。黒9はシマリというべきなのか、白10はカカリといえるのか。

 中央の構えと相性がいいとは思えない黒11の三々は、この不思議な布石の考え方の一端を示している。一本調子の中央志向ではないのだ。蘇は攻めを柱に一局を組み立てるのを流儀とし、張はすぐにでも地へ転換する石の流れを求める。ブラックホール流は柔軟性が売りといえる。

(松浦孝仁)

 消費 黒:0分 白:17分 (持時間各5時間)

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