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 3月19日、日本棋院東京本院。5階の和室「清風」に、身長180センチ級の両者が向かい合った。背もたれに少し寄りかかった黄翊祖と、垂直に背筋を伸ばした金沢真。座椅子の上での正座だから、さらに高く感じられた。細身の2人とはいえ、なんだか立派な足付き碁盤が小さく見える。

 対局開始とともに両者が静かに石を打ち下ろしていく。手つきは丁寧だが、スピードが速い速い。1分ほどの間に11手も進んだ。

 黒1、3、5の高い中国流から7と小ゲイマにシマる手法は流行の布陣で、国内では若手の伊田篤史八段が多用して話題となっている。14手目までを見届けた記者は、思うところあって対局室を抜け出し、棋院事務局へ駆け込んだ。

 黒1から7の実戦例を調べると、伊田が一力遼七段を下して優勝した今年のNHK杯決勝など、数局がすぐに見つかった。なかでも興味深かったのは、NHK杯準々決勝・黄―伊田(黒)戦と本局黒13までの類似性だ。なんと、白8がAにある以外はまったくの同手順。そのとき白番で敗れた黄が、今回は黒番で試している。

 局後に真意を尋ねると、黄は「好きな布石ではないけれど、打たれるとどうしたらいいか分からない。それで逆にやってみようと」という。流行の布陣にどう対処するのか。金沢が試される格好になった。

(伊藤衆生)

 消費 黒:1分 白:5分 (持時間各5時間)

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