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 記者は落ち着かない気持ちで黒番の蘇を待っていた。交通機関が乱れ、蘇は午前10時を2分過ぎたところで到着。規定通り遅刻の3倍「6分」が蘇の消費時間に加算される。

 落ち着かなかった理由はもうひとつ。初手の行方が気になっていた。蘇は第12局の黄翊祖戦で黒A(15の七)へ打っていた。再びあの戦術が見られるかもしれない。しかも相手は張だ。張はこの不思議な手法の発案者で、Aから始まる4連打「ブラックホール」の名付け親でもある。2人の対決にワクワクしないほうがおかしい。

 両者一礼して対局開始。蘇は間髪をいれずに黒1へ。期待はあっさり裏切られた。家を出る前から黒Aに打つつもりはなかったという。ただ、裏切られたとはいえ、それはそれでおもしろい戦いになるのが碁だ。

 白4と右下隅を空けたままカカり、すぐに6へツケるのはしばらく前に張が愛用していた作戦。蘇は手を抜いて左上黒7へ。白8、10は流行定石だが、黒11、13の応手はやや旧式の部類に入る。張も蘇も懐古趣味に走ったかのような序盤だ。

 黒19の打ち込みは絶好に見える。白が守るとすれば18の時だが、ぴったりした手がないのだという。左下はいつでも黒Bから符号順に生きることができるので、左辺の価値は低い。そのため張は上辺への展開を重視した。

(松浦孝仁)

 消費 黒:28分 白:10分 (持時間各5時間)

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