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 5月21日未明、東京は思いもよらない雷雨だった。朝方には晴れあがり、市ケ谷の日本棋院のささやかな植え込みは、アジサイがいきいきと青みを帯びる。そのわきを険しい表情の高尾紳路が通り過ぎる。花など目に入らなかったのだろう。

 今年の高尾はここまで6勝10敗と低調。十段位を失い、本因坊戦リーグから陥落した。しかし名人戦リーグは1敗を維持してトップグループにいる。河野臨とともに暫定首位の黄翊祖を破ると、先頭に並ぶ。逆に黄は勝てば、野球でいう半ゲーム差の単独首位だ。高尾の顔つきが硬くなるのも当然なのである。

 黄の黒番。左下のナダレ型から黒13、15と下辺を重視するのは近年流行の布陣だ。黒17、19も同様。黒Aにオサえ、白21、黒19、白B、黒Cと地にからく打つのもしばしば見かけるが、好みではないのかもしれない。

 対局開始から1時間ほど経過したころ、高尾の様子がおかしい。前かがみになったかと思うと、上半身をのけぞらして頭をかかえ込み、「あーひどい。いやになった」と深刻なぼやき。何があったのか。以下は対局後のコメント。

 「白24、黒25に続いて白D、黒E、白Fと出切る予定だった。ところが黒G、白H、黒Iであっ気なく取られると分かって愕然(がくぜん)とした。出切れないとすると打つ手がない」

(春秋子)

 消費 黒:24分 白:29分 (持時間各5時間)

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