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 ほんの5年ほど前まで日本の第一人者と呼ばれた元名人の張が、5月中旬、故郷の台湾へ一家で移り住んだ。驚きを覚えたファンも多いことと思う。

 「精神的にも体力的にも不調。環境を変えることで、いいきっかけをつくりたい」。35歳、再び納得のいく碁を打つための決断だ。張は台湾行きのもう一つの理由に、娘2人の語学(中国語)留学を挙げた。不振を理由に帰郷するとなれば、なにやら負のイメージがあるが、父親の一面も見せた張は、非常に前向きだった。

 移住といっても、張にはたくさんの対局が控えている。リーグを途中で投げ出すわけにもいかない。だから、家族を残して来日を繰り返す。妻の小林泉美六段は休場(対局不出場)届を出した。

 6月4日、日本棋院東京本院。張が台湾移住後、初めて来日した10日余りの期間に打たれた一戦だった。

 左下白8、10が懐かしい。最近は8で白Aとはずすのが主流だ。解説の溝上知親九段は「特に白10は、ほとんど見なくなりました」。

 張は白16から三線をずらずらとハッた。白2が好位置にあるという主張。下辺を確定地にする白26がぴったりの一手になったので、溝上解説者が「嫌がらせ」を提案した。黒25の前に黒26と白Bを交換するのだ。これなら、黒を固めずに効率よく地にする手はなかったという。

(伊藤衆生)

 消費 黒:46分 白:23分 (持時間各5時間)

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