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 いきなり盤面に注目していただこう。白6の三間高バサミに黒7と二間にトンだ。ここだ。白はAと受ければ普通なのに、8とヒラいて黒9を許す。見たことないなとおっしゃる読者が多いのではないか。記者も黒9までの同一局面は前例を知らない。

 かすかな記憶を頼りに調べてみると、50年近く前、周囲の配石は微妙に異なり、白6が一路低いBのハサミのときに黒9を許した実戦が数局見つかった。さらに21年前の碁聖戦挑戦手合で、当時の小林光一碁聖が林海峰挑戦者を相手に、白6の三間高バサミから黒7、9を譲った例もあった。

 第29局の河野臨―村川大介戦と同じ6月25日の対局。この時点では3敗の張栩にも名人挑戦のかすかな可能性が残っていた。

 一方羽根直樹はリーグ残留の崖っぷちに立たされた状況だ。いや、もう足を踏みはずしているのかもしれない。本局と最終ラウンドに連勝したうえに、残留を争うライバルの村川大介や蘇耀国に負けてもらって、やっと生き残れるという苦しい立場である。解説は工藤紀夫九段。

 「黒9を久しぶりに見ました。白は8と10の二つの大どころを占めたのでバランスは取れていると見たのです。黒11は12方面にシマるのが常識的。しかし羽根さんは黒13と打ち込みたかったのでしょう」

(春秋子)

 消費 黒:9分 白:13分 (持時間各5時間)

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