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 野球の世界で「不動の」とくれば「四番打者」や「先頭打者」を連想する。どちらも確固たる信頼を得た選手が、そう呼ばれるのだろう。囲碁界では「不動の二番手(ナンバー2)」という言葉がささやかれている。山下敬吾のことだ。

 名人、棋聖、本因坊の三大タイトルを独占するのは井山裕太。山下は、その三大タイトル挑戦に直結する持ち時間5時間のリーグで圧倒的な強さを誇る。

 山下に対する「不動の」は賛辞を含みつつも、一層、第一人者井山の存在を引き立てる。不動といわれて、喜べるはずもない。

 7月3日、日本棋院東京本院。名人挑戦をかけた戦いは佳境を迎えていた。首位争いをしている河野臨、高尾紳路、黄翊祖は2敗を守り、最終戦を残すだけになっている。山下はあと2局。とにかくここで勝って、3人に並びたい。蘇耀国は、これが最終戦だった。

 黒1、3、5の高い中国流に、蘇が白8と三々へ入る。山下は黒25と構えて右下一帯に勢力を張った。

 左辺白28は左下に寄っている。次に下辺黒陣へ打ち込みを狙っていることの表れだ。

 「続いて黒はAのトビが自然。黒29は山下さんの工夫です」と解説の加藤充志九段。白が28と堅く打った場所なので、さらに固めても惜しくない。下辺に打ち込ませないようにするのが、黒の作戦だった。

(伊藤衆生)

 消費 黒:28分 白:24分 (持時間各5時間)

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