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 秋分の日の9月23日、大型連休シルバーウィークの最終日に、挑戦者とともに午後2時新宿発の特急に乗り込んだ。中央線をおよそ1時間半、甲府に降り立つと盆地の汗ばむ空気がおそってきた。

 湯村温泉郷の常磐ホテルは、近年、名人戦に欠かせない対局場の一つになった。本局が11回目。たいていは第5局以降の後半戦、10月中旬から11月上旬に設定されていた。いつもとは季節が違う。

 名人は午前中に自宅を出て新幹線で新大阪から静岡へ向かい、身延線経由で午後4時過ぎに甲府へ到着。かなりの長旅だった。

 前夜祭は行われず、両対局者は関係者一同と夕食をとる。勝負が佳境にさしかかる後半戦のスタイルだ。

 記者は毎年このスタイルに切り替わると、秋の深まりとともに名人戦の決着が近いことを感じとる。本局はまだ第3局だが、挑戦者にとっては第2局の逆転負けが痛すぎる。しかも相手は第一人者。なぜか、前半戦だというのを忘れさせる要素がそろっていた。

 翌朝9時対局開始。座椅子の後ろにひざ掛けが用意されたが、両者はさっそく上着を脱ぎ、その上に畳んで置いた。対局室に秋の気配はない。

 例年、名人戦でここを訪れると鮮やかな紅葉が楽しめる。ふと庭に目をやると、木々の緑が、うっすら赤みを帯び始めたところだった。

(伊藤衆生)

 消費 黒:1分 白:6分 (持時間各8時間)

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