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 井山裕太が史上初の七冠達成を決めたのは4月20日の日本棋院本院「幽玄の間」。川端康成の「深奥幽玄」の掛け軸の掲げられた和室には、空前の数の報道陣が詰めかけた。

 本局はその8日後、同じ部屋で静かに始まった。張栩が史上初の五冠となったのは2009年。井山に第一人者の座を奪われ、いまは無冠だ。

 複雑な感情があるはずの張が、七冠達成についての取材に、井山へ最大限の賛辞を送った。井山に挑戦したい、とも。今年、張が挑戦の可能性があるのは好調の名人戦しかない。

 最近の張は、目外し(白4)を愛用している。平田智也の黒5の三々入りに、すかさず白6へ。用意していた一手だった。白6は、ほとんど定石書に載っていない。

 11から17は黒石が重複気味で、18までは白に不満がないという。17で黒Aとノゾき、白Bとツイでくれれば黒Cとサガりたい、という検討陣の意見があった。黒に工夫が必要な場面だったようだ。

 黒31は右上に関連している。黒33に白36、黒D、白E、黒F、白G、黒H、白34、黒I、白Jは黒Kがシチョウになる仕掛けだ。白は34とノビることになる。

 黒35に続いて白37、黒L、白38、黒Fとなれば黒の理想だが、白は当然36と切る。35は黒36にツグのがよかった。張は早くも打ちやすさを感じていた。

(伊藤衆生)

 消費 黒:56分 白:16分 (持時間各5時間)

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