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 もしかしたら張は、アマチュアよりも楽しく自由に碁を打っている。この碁を見てそんなふうに感じた。

 現代の日本碁界は中国や韓国からもたらされる布石戦略をそのまま受け入れるケースが多い。今は中韓を追いかける立場なので、それはいたしかたない。とはいえ、世界の流行だからとあっちでもこっちでも同じような序盤戦になるのはちょっとさみしい。そういう風潮を、張は自由を求めることで拒否している。本局解説の小松英樹九段はこう見ている。「張さんは変わりましたね。以前は同じ序盤作戦をこれでもかと打っていたのに、最近はいろんな布石を試しています」

 5連勝なるか。挑戦レース単独トップがかかるこの碁で張が設定したテーマは何か。白12までに目新しさはない。右下のツケ引き定石の途中に手を抜くのは昔からある趣向だ。おやっと思うのは黒13のカカリ一本からの15だろう。こうなると白は黒の手抜きをとがめたくなる。だれでも白16のツケが浮かぶ。

 小松「ここですね。黒17のハネ出しがテーマだったのでは? ポイントは、白22までの振りかわりの最中に黒A、白Bを決めなかったこと。その理由はすぐに盤上に現れます」

 黒19から27まで、張の着手はすべてノータイムだった。黒Aを保留したのはコウを意識していたからにほかならない。

(松浦孝仁)

 消費 黒:12分 白:25分 (持時間各5時間)

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