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 河野の師匠・小林光一名誉名人の亡くなった妻、禮子七段は、自らを「棋道家」でありたいと語っていたという。その影響を受けたのだろう。河野を見ていると棋道の「求道者」に思えてくる。

 井山裕太名人に挑戦した第39期七番勝負では、ほぼ毎局、深夜まで、両対局者で検討を続けた。勝ち負けに関係なく、誠実に盤に向かう姿からは、碁に対する熱い探究心が伝わってきた。

 河野はしばしば、序盤に工夫をする。7月7日、日本棋院「流水の間」で打たれた本局でも研究の一端が表れた。黒1、3の二連星から右辺の星下5。最近では珍しい布石だ。黒11までに3分しか使っていないことからも、作戦を立ててきたといっていいだろう。

 淡々と手順が進む。平田は4分の考慮で白12とコスみ、黒13のカカリに白14と二間に高くハサむ。黒15の三々入りから23まで、基本定石ができあがる。

 白24まで、ごく自然な進行に見えたが、解説の小林覚九段は「すでに白の嫌な碁になっています。黒石の距離感がいいというのか、伸び伸びとした配置になっている。白は左辺のバランスが悪い」。優劣はわずかでも、はっきりとした差。これが河野の経験と研究の成果であり、一流棋士の強さなのだという。

 開始から45分、河野は黒25とオサエ込み、すぐに動いた。

(内藤由起子)

 消費 黒:23分 白:22分 (持時間各5時間)

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