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 挑戦者高尾紳路が熱い。「勝つ」という意思をこれほど強く前面に出してくるとは。

 昨年の七番勝負は名人井山裕太に4連敗を喫した。その悔しさを晴らしたいと思うのは勝負師として当然といえる。ただ、8月29日に対局場のホテル椿山荘東京で行われた前夜祭で、主催者あいさつに立った朝日新聞の渡辺雅隆社長のスピーチを聞いて驚いた。

 「先ほどお話をうかがった。去年のようなことは絶対にないとおっしゃっていた」

 名人は今年、宿願だった七大タイトル独占を成し遂げ、国内に敵なしを強烈に印象付けた。対戦成績は挑戦者の14勝34敗だというのに、どこからその自信が生まれたのか。むしろ今期も惨敗なら「勝負づけはすんだ」との烙印(らくいん)を押されるだろう。悲壮な決意なのか、明確な手ごたえがあるのか。答えを見極めたい。

 翌30日午前9時、趙治勲名誉名人が七番勝負の開幕を告げた。

 握りで先番を引き当てた挑戦者は黒1から7と、小林流(小林光一名誉名人が好んだ布陣)に構えた。白8のカカリは「厳しい踏み込み」と解説の河野臨九段。通常は下辺黒の勢力に敬意を表し、少し離れてカカるケースが多い。例えば白Aや白Bだ。

 当然の黒9に名人は白10のハサミ返しを用意していた。挑戦者はじっと力をためるように黒11へ。

(松浦孝仁)

 消費 黒:17分 白:16分 (持時間各8時間)

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