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 8月末の東京から始まって愛知県田原市、静岡県沼津市、兵庫県宝塚市と転戦した七番勝負は、静岡県熱海市の「あたみ石亭」にやってきた。女将や仲居さんたちが「お帰りなさい」と出迎えてくれるので、つい「ただいま」と返事したくなる、アットホームな名人戦の定宿である。

 名人にとって"ゲンのいい"対局場だ。19歳で挑戦者になった第33期こそここで敗れたものの、その後34期、36期、39期と3連勝。とくに34期は史上最年少名人の誕生で報道陣がどっと押しかけ、異例の記者会見が行われたほどだった。

 しかしゲンがよくても状況は依然厳しい。負けたら名人交代、つまり七冠独占が崩れる。第5局前夜の名人はいつもより口数が少なく、明らかに緊張しているようだった。

 10月12日、台風や秋雨前線にたたられた今シリーズで初めて青空が広がった。離れの自室からまず挑戦者が、続いて名人が現れ、武宮正樹立会人の「時間になりました」の声で、挑戦者の手が右上星に伸びた。

 右下の一間ジマリ、左下の星から小ゲイマの構え、左上のツケ引き定石と、着手が速いのは、よく似た両者の前例があったからだろう。ことしの本因坊戦第2局である。ただし本因坊戦では黒11がAのカケツギ、13が一路広いBだった。その違いが全局にどう影響するのか。

(春秋子)

 消費 黒:9分 白:18分 (持時間各8時間)

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