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 坂井が時間をたっぷり残したのは、いずれ細かくなると踏んだからだろう。この予測は間違っていない。左下白90から左上92とオサえられ、わずかに白リードとはいえ、終盤の微妙な勝負になるはずだった。

 しかし坂井には一つだけ軽視していたことがあった。右辺から右下一帯の黒地の薄さだ。黒93、白94の交換でそれが現実のものとなったのだが、まだ気がつかない。

 「坂井さん危機感がなかったのでしょう。黒93が敗着です。参考図の黒1、3と黒地を完全にするのが正しく、5に続いて譜の白100、102を決め、白Aとトブ。これならヨセが難しく、勝負の圏内でした」と山田解説者。

 井山はわずかな隙を見逃さない。白104が手づくりの事始め。そして106が痛烈な一撃だった。坂井は天井を見上げ、文字通り仰天した。やがて「参った。なさけないね。あきれちゃった」と自分をののしり続けた。「まったく見てなかった。一発で仕留められた」という。106の威力、分かっていただけるだろうか。

(春秋子)

 消費 黒:2時間22分 白:4時間7分 (持時間各5時間)

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